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ソフトバンクの松田宣浩が3億円の減俸を受け入れた理由とは?
ソフトバンクの松田宣浩が3億円の減俸を受け入れた理由とは?

激白…なぜソフトバンクの”熱男”松田宣浩は3億円の減俸を受け入れたのか…知られざる苦悩と38歳の覚悟

「何が足りなかったのか。年齢のせいなのか。それとも他に原因があるのか」

 そう自問して不振の原因も自己分析した。

「技術的なアプローチを色々とやりすぎた。バットを構える位置を一番上に上げ、叩くだけという形を作ったが、極端にやりすぎて“間”がなくなった。色々考えて次は下げた。練習で感覚をつかんでも、いざ本番になると感覚が違う。毎日、試合に出れていないと、その修正も難しかった」

 バッティングの肝である“間”がなくなっていたのだ。不振で数字が落ち、スタメン出場がなくなることで悪循環を呼ぶ。

「三振を怖がり、前へ飛ばすことだけを考えてしまい、初球からいって、結局、凡打の山。好球必打ではなく、なんでも手を出すだけのバッティングになっていた。1球を待つ余裕があればバッティングに間ができたのだが…」

 月間別の打率成績を見ると4月は打率.291と好スタートを切り、5月に4本塁打をマークしたが、6、7月と打率1割台に低迷。9月に再び打率.290、3本塁打と回復したが、シーズンを通じて波が多く、爆発の期間が短かった。

「必ずシーズンのどこかで爆発するところがあるが、そこを作れなかった。それを作れなかったから、出られなかったというのもあると思う」

 だが、復調のきっかけをつかみシーズンを終えることができたという。

 10月25日に敵地で行われたロッテとの今季最終戦。スタメンはリチャードで松田は6回二死の代打からの途中出場となったが、岩下にフルカウントと追い込まれてから150キロのストレートを弾き返して左中間を破るタイムリー二塁打を放った。

「感覚が手に残る1本だった。ボールを前でさばき、打った瞬間にボールを見る時間があった。左中間へ打球の筋が見えた。原点はあのバッティング」

 もう一度、輝きを取り戻すためのプランも固めた。

「打率を3割打てば、ホームランがなくとも使ってもらえるのか。それとも打率は250でも本塁打が20本に乗ればいいのか。2つを考えた」

 導いた結論は「打率.250でも、20本塁打打てば使ってもらえる」というもの。

 今季は代打の機会も増えた。代打成績は、11打数4安打で打率.364の数字を残したが、まだ「代打の神様におさまるのは早い」という。

「4打席をもらうと、そこに絶対にチャンスはある。数字も増える。39歳でもう一回レギュラーを狙う。若々しくていいでしょう?」

 そのためには「サード・松田」にも固執しない。ファーストへのチャレンジも決めた。ファーストミットは、元々、準備してあったという。

「ファーストもやりたい。僕よりもファンの方々も含めて周りが“サード松田“に固執しているように思える。ゴールデングラブ賞もサードで8回も取ったし、6月には、有藤さんのサードの記録も抜いた。もうサードに未練はない。新たなチャレンジをしてバッティングにより集中したいという考えもある」  今季元ロッテの有藤道世氏が持っていた記録を抜き、三塁手として1775試合出場のパ・リーグの最多出場記録を作った。もう「サード松田」に区切りはついた。

 すでに藤本博史新監督にも意向は伝えた。

 藤本新監督は「オレの中にも”サード松田”があった。そこにこだわらないなら、やってみようや。ベテランも少なくなった。チームのことは任せた。頼む!」との言葉を返してくれたという。同級生の川島慶三が戦力外となり楽天に移籍、一つ年下の長谷川勇也も引退して打撃コーチに就任し、投手陣には松坂世代の和田毅がいるが野手では最年長だ。

 松田には積み上げてきた自負とモチベーションがある。

「今年は通算300本塁打をクリアした。次は通算1000打点にあと16打点まできているし、2000本安打までも189本。今年のヒット数は83本と伸びなかったが、39歳のシーズンにヒットもバンバン打ちたい。目の前の数字も自分のモチベ―ションにしたい」

 通算1000打点は過去に46人しか記録していない大記録。さらに名球会入りするための2000本安打を達成するためには、今シーズン、レギュラーを取り戻すことは必須だろう。フル出場した3年前には139安打したのだ。V字回復することに成功すれば、その金字塔達成が見えてくる。失った3億円を取り戻すことにつながるかもしれない。

 その先に続く見果てぬゴールもある。

「どのチームも若手に切り替える流れが出てきて、アラフォー選手にはつらい時代になっているが、40歳まではユニホームを着る。ここまできたら長く野球をしたい」

 松田を叱咤激励するのが同級生の存在だ。 「おかわり君(西武・中村剛也)、栗山巧(西武)、平野佳寿(オリックス)、川島(楽天)ら、同級生が頑張っている。昭和58年世代のなかで一番最後までユニホームを着ていたい」  栗山は、今季2000本安打を打ち、平野はリーグ優勝したオリックスのストッパーを任された。

 幸いなことに今季限りで退任した工藤公康監督から学んだ“工藤遺産“もある。

「鍛えないと人間は落ちていく、でも鍛えれば年齢は関係ない、ということを教えられた。7年間、1回も大きな怪我もなく、2軍にも行っていない。色々と工藤監督が肉体やトレーニングの知識を下さり勉強したことが生きたと思う」

 “熱男”にとって来季は野球生命をかけた勝負の1年。  新型コロナの影響で恒例のグアム自主トレは2年連続で中止となった。今年は宮崎で自主トレを行ったが、来年は熊本・藤崎台から復活へのスタートを切る予定だ。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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