トライアウトでアピール成功は誰?…元ヤクルト編成部長のノムさん“右腕”が選んだ2人と巨人の井納、桜井の評価とは?
プロ野球の12球団合同トライアウトが8日、仙台の楽天生命パーク宮城で行われ今回、戦力外通告を受けた選手ら49人が参加。実戦形式のシート打撃に臨み、投手は打者3人に投げ、野手は3、4打席立った。ネット裏から各球団の編成担当者らが視察したが、ヤクルトの元編成部長で、“名将“野村克也氏の右腕と知られ、“再生工場”の成功を見てきた松井優典氏に、アピールに成功した選手を独自の目線でピックアップしてもらった。
楽天の変則左腕の渡辺に“村上キラー”としての期待
最後の晴れ姿か。それとも再起への入り口か。楽天の本拠地で、3年ぶりに有観客で行われたトライアウト。
「野村さんなら間違いなく声をかけると思う。楽天の渡辺は左のワンポイントとして戦力になれる」
ノムさんを現場と編成の両面で支えてきた松井氏が、49人の戦力外の男達の“最後の戦い”を見て、真っ先に名前を挙げたのが、楽天の変則左腕の渡辺佑樹(27)だ。西巻賢二(23、ロッテ)を137キロのアウトコースのストレートで空振り三振に打ち取ると、続く宮田輝星(24、日本ハム)をボール2つが先行してから140キロ台のストレートで三塁ゴロに打ち取った。
「ボール2となってからのピッチングに注目していたが、しっかりとストライクゾーンで勝負できていた。変則サイドで、しかもリリースポイントが遅れてくるので、左打者は背中からボールが来る感覚となり対応が難しい。ストレートは140キロ台が出ているし、巨人の大江、阪神の渡辺のイメージに重なる。野村さんが阪神で再生させて松井キラーとして起用した遠山のように、セのどこかの球団が“村上キラー”として起用すれば面白いと思う」
3人目は左打者の元チームメイトの山﨑真彰(27、楽天)。スライダーを続けてカウントを整えると、内角へズバっとストレートを投じてボテボテのセカンドゴロ。渡辺は「左打者の内角に、どんなカウントでも投げられることが強み」と胸を張った。
2017年横浜商大からドラフト4位で楽天入団。2年前に石井一久監督に勧められてサイドハンドに変えた。今季は1軍では13試合に投げて防御率2.13だったが、8月以降、昇格のチャンスはなく、2軍では31試合登板で1.67の数字を残した。奇しくもこの日が誕生日。
「ダメなときに修正がきかなかったのでそこを治していかないといけない。NPBに戻れたら一番いい。そこを目指してやっていきたい」
次に松井氏がチェックしたのは中日の右腕、佐藤優(29)だ。
中神拓都(22、広島)を三ゴロ、宮本秀明(26、横浜DeNA)を二ゴロ、西巻を左飛に打ち取った。曲がりの鋭いスライダー、フォークも見せたが、ストレートは最速147キロで、結果球は、すべてストレート。
「中日の投手陣のレベルの高さと、29歳という年齢的なこともあって戦力外になったのかもしれないが、腕を柔らかく使えて、ストレートに押し込む威圧感がある。腕の振りよりもボールがさらに伸びてくるのだろう。安定感もあったし、中継ぎ不足のチームからはオファーがあるかも」
2015年に東北福祉大からドラフト2位で中日に入団。当初は先発でプロ初登板、初勝利をマークし、その後、中継ぎに配置転換され、2018年にはストッパーを任され、42試合、1勝2敗5セーブ10ホールド、防御率2.08の成績を残した。ここ数年は怪我に悩まされ、今季も1軍では、5月に4試合中継ぎ起用されただけ。2軍では49試合に投げたが、防御率3.97、2勝2敗6セーブの成績に終わり戦力外を通告されていた。
「まだまだやれると思い、今回トライアウトを受けた。少し緊張していたが、ストライクが入ったからよかったかな」と佐藤も満足気だった。
また松井氏は「大崩れしない安定感と年齢という部分を考慮すれば、146キロを出していた広島の田中。同じ腕の振りでストレートと縦割りの大きなカーブを投げ分けることができる日ハムの望月が目に付いた」とトップを切ってマウンドに上がった広島の田中法彦(22)と日ハムの望月大希(24)の2人をアピール成功リストに付け加えた。田中は、三重・菰野高から入団4年、望月も創価大から入団3年で戦力外となった。