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故障でW杯欠場となったDF中山雄太の代役に選ばれたのはFWの町野修斗だった(写真・アフロ)
故障でW杯欠場となったDF中山雄太の代役に選ばれたのはFWの町野修斗だった(写真・アフロ)

DF中山雄太の代役にFW町野修斗を抜擢したW杯緊急サプライズ人事に本当に不安はないのか?

こうした状況のもとで編成されたバックアップメンバーに、大迫の域には達していないものの、ポストプレーもこなす185cm77kgの町野が名を連ね、白羽の矢を立てられたのだろう。
 突出したスピードを武器にする前田と浅野を選んだ時点で、森保監督は大迫を軸にすえたアジアでの戦い方から堅守速攻スタイルに舵を切った。W杯優勝経験のあるドイツ、スペイン両代表とグループリーグで対峙するカタールでの戦いを見すえて、最後は腹をくくったはずだ。
 大迫や原口元気(31、ウニオン・ベルリン)を加えるか否かで悩み、最終的には1日の朝に決めた26人に、わずか1週間後に「高さ」を武器とする町野を加えた。一見すると矛盾しているように、あるいは迷走しているように映るが、「高さ」は攻撃のオプションになるだけではない。
 思い出されるのは2010年の南アフリカ大会だ。
 フィールドプレーヤーの最後の1枠で迷っていた岡田武史監督は、それまで国際Aマッチで18試合に出場してわずか2ゴールだった187cm78kgの長身FW矢野貴章(当時アルビレックス新潟)を選んだ。5人目のFWだったが、得点力を買われての抜擢ではなかった。
 拮抗した展開で迎えた試合終盤に、前線で走り回って相手の攻撃の起点を徹底的に潰しまくり、相手のセットプレー時には日本のゴール前に「高さ」を加える。大会直前に堅守速攻スタイルに舵を切っていた岡田ジャパンで、矢野はいわば“守備的FW”を託された。
 果たして、矢野はカメルーン代表とのグループリーグ初戦の後半37分から途中出場。岡田監督の期待に応えて守備面で奮闘し、1点をリードしていた日本の逃げ切りに貢献した。勢いに乗った日本は芳しくなかった下馬評を覆して、2度目のグループリーグ突破を果たしている。
 町野のプレーには「高さ」だけでなく、当時の矢野に通じる前線での泥臭く、かつ献身的なハードワークが脈打っている。湘南を通じて発表したコメントで「戦える」ではなく、あえて「闘える」と記した点に、カタールの地で託されるプレーを理解している跡が伝わってくる。
 もちろん、今シーズンのJ1リーグ戦、特に代表戦で打ちのめされた直後の10月以降に見せた成長の跡は、そのまま森保ジャパンのプラスアルファにもなる。サプライズで追加招集された町野は慌ただしく準備を整え、長友や相馬らの国内組とともに今日9日にカタールの地へ飛び立つ。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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