サプライズ招集もあったスペインは“最強”バルセロナから7人…エンリケ監督「久保に代表されるように日本には我々を困難に陥れる選手がいる」
アフリカ大陸の西端に位置するギニアビザウで生まれ育ったファティは、父親の仕事の影響で幼少期の大半をスペインのセビリアで過ごした。兄の影響でサッカーを始めると一気に頭角を現し、セビージャの下部組織をへて、2013年にバルセロナの下部組織に加入した。
バルセロナではひとつ年上の久保建英と才能を認め合い、ピッチの外でも同じ時間を多く共有するほど意気投合。そろってゴールを量産する試合が続き、いつしか対戦相手から「悪魔のコンビ」として畏怖される存在になった。
2014年8月から約3年間にわたって、現役時代の古巣でもあるバルセロナの指揮を執ったエンリケ監督のもとにも、下部組織に神童と呼ばれる選手がいる情報は入っていたはずだ。それが質疑応答のなかで語った「よくわかっている」という言葉につながっている。
迎えた2019年9月。トップチームとプロ契約を結び、衝撃的なデビューを飾っていたファティはスペイン国籍を取得。以前から公言していたスペイン代表でのプレーをあらためて希望し、ギニアビザウ代表でのプレー経験がないと確認した国際サッカー連盟からも許可が下りた。
コロナ禍もあって時間が空いたものの、1年後の2020年9月3日に行われた、ドイツ代表とのネーションズリーグ2020-21初戦でファティは代表デビューを果たす。まだ17歳だった逸材を抜擢し、後半開始とともにピッチへ送り出したのはエンリケ監督だった。
デビュー2戦目となった3日後のウクライナ戦で先発フル出場。前半32分には初ゴールを決めたファティだったが、11月のレアル・ベティス戦で左膝の半月板を損傷。長期の戦線離脱を余儀なくされた影響で、コンディションがなかなか上向かない状態が続いた。
昨シーズンのラ・リーガ1部では10試合に出場して4ゴール。アルゼンチン代表のスーパースター、リオネル・メッシ(35、現パリ・サンジェルマン)の象徴だった「10番」を継承したことで精神的な負担が増したのか。今年1月にも左太もも裏を痛めて離脱している。
今シーズンの出場時間が短かったのも、バルセロナ側が起用法に慎重を期していたからだ。それでも、エンリケ監督がバルセロナ側とコンタクトを取りながら、ファティをカタールW杯代表に抜擢した背景には、スペイン代表が抱える深刻な決定力不足がある。
直近の国際大会となる昨夏のユーロ2020は準々決勝、準決勝とともに延長戦を含めた120分間を戦って1ゴールにとどまった。PK戦の末に前者でこそスイスを破ったものの、後者では優勝したイタリアに屈した。W杯予選はグループBを1位で突破したが、8試合で総得点は15にどとまり、そのうち「11」は実力的に劣るコソボ、ジョージア両代表からあげたものだった。
9月シリーズは1勝1敗。スイスに1-2で敗れ、ポルトガルには試合終了間際のFWアルバロ・モラタ(30、アトレティコ・マドリード)のゴールで1-0と辛勝した。ともに1ゴールどまりで、かつ4-3-3を採用しながら、サイド攻撃がなかなか活性化しない状況にエンリケ監督も動いた。