サプライズ招集もあったスペインは“最強”バルセロナから7人…エンリケ監督「久保に代表されるように日本には我々を困難に陥れる選手がいる」
左ウイングを主戦場とするファティは、トップチームでデビューした2019-20シーズンにラ・リーガ1部で7ゴールをマーク。突破力に加えて決定力も併せ持ち、さらに真ん中で“偽9番”としてもプレーできる。エンリケ監督は「9月の段階では、代表でのプレーに必要なリズムが見えていなかった」とあらためて振り返った上で、メディアから指摘された不安を一蹴している。
「アンスは以前を上回る状態に戻る。時間の問題だと思っている」
ファティよりも後の昨年3月にフル代表デビューを果たし、ユーロ2020だけでなく東京五輪でも活躍するなど、一気に台頭した19歳のペドリ。昨年9月に代表デビューを果たした18歳のガビと、バルセロナの下部組織出身の中盤コンビも順当に選出された。
彼らがインサイドハーフでそろい踏みを果たせば、真ん中でのコンビネーションプレーが増える。必然的に相手もマークを中央へ絞らざるをえず、サイドにスペースが生じる。つまり、ファティをはじめとするウイングが自在に動き回れる状況が整う好循環が生まれる。
言うまでもなくペドリ、ガビ、そしてファティは初めてのW杯となる。他にも大舞台の経験がない選手が多く、対照的に初優勝した2010年の南アフリカ大会を含めて、4大会連続でW杯代表に名を連ねたDFセルヒオ・ラモス(36、パリ・サンジェルマン)の落選には大きな議論が沸き起こっている。それでも指揮官は「これが、ルイス・エンリケが選んだチームだ」と意に介さない。
「W杯だからといって、私が連れてきた若い選手たちをデビューさせるのをやめるつもりはない。何を見せるのか、という点にも迷わない。前線で試合を支配し続けるチーム。ハイプレスをかけて、相手と徹底的に戦うチーム。いまの段階では、そうした表現でいいと思っている」
グループEに入ったスペインは、12月1日午後10時(日本時間2日午前4時)にキックオフされるグループリーグ最終戦で日本と対戦する。スペインが1-0で勝利した東京五輪の準決勝を見たというエンリケ監督は、日本に対して「かなり興味深いチームだ」と言及している。
「日本は常に成長しているチームだ。ヨーロッパの強豪クラブでプレーする選手たちが多く、前線からハイプレスを仕掛け、さらに最終ラインから恐れずにパスを繋いでくる。そして、中盤には久保に代表されるように、われわれを困難に陥れる選手がいる。簡単な試合にはならない」
バルセロナでそのまま駆け上がってプロになったファティと、一時帰国を決断するなど紆余曲折をへて、再びスペインへ挑んで4シーズン目で飛躍するきかっけをつかんだ久保。かつての盟友が歳月をへて、ともに国を背負った形で再会を果たす。それが4年に一度のW杯となるドラマも加わったなかで、スペインは17日に敵地でヨルダン代表と対戦。本番への総仕上げに臨む。
(文責・藤江直人/スポーツライター)