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スペイン戦の後半3分に同点ゴールの堂安(右)を森保監督が祝福(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
スペイン戦の後半3分に同点ゴールの堂安(右)を森保監督が祝福(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

城氏が解説するスぺイン戦“歓喜逆転勝利”の理由…「もう奇跡ではない。弱点分析に前への意識を持たせた森保采配と堂安が示したリバウンドメンタリティ」

 後半6分にハラハラするVARチェックの結果を待って逆転ゴールが生まれた。
 堂安が、「ファーサイドに詰めてくれ!」のメッセージを込めてゴール前に送ったボールは、少し距離が遠くなったが、ゴールラインギリギリで三笘が追いついた。その折り返しを走り込んできた田中が押し込んだ。三笘にも「前へ」の意識が強くあったため、攻撃的ポジションを取っていて追いつくことができたのである。
 森保監督の交代カードの切り方も冴えた。
 後半17分に前田から浅野、同23分に鎌田に代えて冨安を入れたが、このとき、森保監督は、スペインが、左サイドにアルバを投入する動きを見ていた。アルバは攻撃的な選手。そこを抑えるために冨安を入れたのだろう。
 日本はドイツ戦に続き、前半は耐え、後半に選手を入れ替えてリズムを変え、一気に勝負に出て逆転劇を演出するというひとつの必勝パターンを確立した。交代選手が活躍するとチームの雰囲気が変わり、勢いが出る。森保監督の采配の意図を全員が理解して意思統一がはかられているのが理由だ。W杯の3戦を戦う中で戦術、意識を全員が共有して具現化する精度と成熟度が増してきたと評価していい。
 さて次は一発勝負の決勝トーナメントである。日本は2002年の日韓大会、2010年の南ア大会、2018年のロシア大会に続く4度目のトライ。ここからはまた別のW杯が始まると考えねばならない。1位抜けしたことで相手はグループFを2位で終えたクロアチアになった。世界屈指の中盤を誇り、粘り強く、パワーがあるのが厄介なロシア大会の準優勝チーム。実力的に言っても格上となる。だが、見方を変えれば、2位抜けだった場合の対戦相手、モロッコの方が日本の苦手とするタイプのチームだっただけに1位突破したことでベスト16の壁を突破できる可能性が出てきたのだ。
 8強進出確率は、50%程度かもしれないが、ドイツ、スペインという強豪を下したことで手にした自信という名のチームメンタリティは大きなプラスとなる。
 クロアチアのキーマンはレアル・マドリードでプレーするモドリッチ。彼をいかに抑えるかがポイントで、この日、後半42分から出場した遠藤が先発復帰できて、マンツーマンでモドリッチを封じこめれば勝機が高まる。中3日の休養でいかに疲労をリカバリーするかも勝敗のカギを握るだろう。
(文責・城彰二/元日本代表FW)

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