2000万罰金騒動を乗り越え”声出し応援エリア解禁”に浦和サポーター燃える…主将の西川は鳥肌…ACL決勝T1回戦快勝を鼓舞
新型コロナウイルス禍で見られなくなって久しい光景のひとつ、自身へのチャントの発信源は声出し応援エリアが設置された、ゴール裏と呼ばれる南北のサイドスタンド席だった。特に北側はコロナ禍前のようにチームカラーの赤で染まり、真夏の夜空に響きわたる大音量の声援やチャントで浦和の選手たちを鼓舞し続けた。
今月10日に同じ埼玉スタジアムで行われた、名古屋グランパスとのYBCルヴァンカップ準々決勝第2戦でも、南北のサイドスタンド席で声出しが解禁された。Jリーグ側が6月から段階的に導入してきた声出し応援運営検証試合で、主催する公式戦が初めて対象となった舞台を3-0で制した浦和がベスト4進出を決めていた。
ただ、名古屋戦で浦和のゴールマウスを守ったのは、森保ジャパンでもデビューを果たした19歳の鈴木彩艶だった。リザーブとして勝利を見届けた西川は以前に、浦和のファン・サポーターへ向けてこんな言葉を残していた。
「本当に心強い存在だし、これからも一緒に闘っていきたい。そして、声が出せるようになったときに、僕はまたあの声を聞くのを本当に楽しみにしている。いまは我慢の時間が続くけど、あと少し、僕たちを手拍子で後押ししていただけたら」
ジョホール戦で楽しみにしていた声はキックオフに先駆けて、個人へのチャントとして西川のもとへ届いた。戦いの舞台がJリーグからACLに変わったなかで、ファン・サポーターが粋なサプライズで士気を高めてくれたと西川は感謝する。
「本当にいろいろなことを考えながら、自分たちが勝つための行動を示してくれた。そこへ感謝しながら、逆に自分たちは結果で示そうと、今日はそれだけを考えて試合に入りました。ウォーミングアップのときから声援が勝つ雰囲気を醸しだしてくれていたので、その期待に応えなければいけない、というところで責任を感じました。だからこそ、いい雰囲気、いい緊張感のなかでプレーができたと思っています」
迎えた前半。北側のゴール裏へ向かってジョホールが攻め込むたびに、ファン・サポーターが発する大音量のブーイングにさらされた。右サイドバックの酒井宏樹(32)は「前半が勝負だと思っていた」と、想定されていた状況下でのゲームプランを明かす。 「なので、前半はチーム全体としてかなりの出力というか、エネルギーとパワーを使いました。堅く守って、相手に隙を与えない展開から点を取っていこう、と」
合言葉通りに開始わずか8分に、FW松尾佑介(25)が獲得したPKをDFアレクサンダー・ショルツ(29)が決めて先制。19分に鮮やかな直接フリーキックを叩き込んだMFダヴィド・モーベルグ(28)は、39分にも流れのなかからダメ押しの3点目を決めた。
グループIを首位で勝ち上がり、川崎フロンターレを敗退させたマレーシア王者、ジョホールの出鼻をくじき、心を折るのに十分すぎるほどの猛攻。後半に入っても途中出場のFWキャスパー・ユンカー(28)が2つのゴールを追加した。
数種類のチャントを歌い分けた浦和のファン・サポーターは、試合展開によっては静寂に支配される状況や、手拍子だけを響かせる光景をも生み出した。メリハリをつけながらチームを後押ししてくれた90分間へ、酒井は「僕としてはありがたいとか、そういう言葉は使いたくない」と意外に聞こえる思いを口にしている。
「やはり僕たちよりもACLを知っているし、一緒に戦っている。そこに対してありがたいとか、素晴らしいという言葉はあまりふさわしくないと僕は思うので」