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神宮球場で開催された日本シリーズ第2戦は3点差でオリックスに負けていたヤクルトが9回に内山の同点3ランで追いつき執念ドロー
神宮球場で開催された日本シリーズ第2戦は3点差でオリックスに負けていたヤクルトが9回に内山の同点3ランで追いつき執念ドロー

なぜヤクルトは劇的ドローを演出できたのか…オリックスの誤算とルールに救われた幻の勝ち越し点

 日本シリーズ第2戦のヤクルト対オリックスが23日、神宮球場で行われ5時間3分の熱戦の末3-3の引き分けに終わった。ヤクルトは0-3で負けていた9回無死一、二塁からプロ2年目の内山壮真(20)が起死回生の同点3ラン。延長12回には木澤尚文(24)の暴投で勝ち越しホームを踏まれたが、ボールがベンチに入ったため、公認野球規則に救われて得点は認められずに試合は引き分けに終わった。第3、4、5戦は25日からオリックスの本拠地京セラドーム大阪で行われDH制が採用される。

 星稜高出身の20歳の内山壮真が9回に代打同点3ラン

 

 ホームランでドラマを演出できるのは“村神”だけではない。プロ2年目、20歳のキャッチャーの内山が大仕事をやってのけた。3点を追う9回無死一、二塁。代打で日本シリーズ初打席に入った内山は、オリックスの防御率0.61の“新守護神”阿部に、わずか2球で簡単に追い込まれた。だが、続く外角低めのカットボールをファウルにすると、2球続けて、誘いをかけてきたスプリットに手を出さない。
 某セ・リーグの大物OBが、阿部と内山の心理状態をこう分析した。
「阿部は2-2というストライクを投げねばならないカウントを自ら作ってしまった。頭の中には、次の次の打者である村上宗隆の影がちらついていたと思う。絶対に満塁にはしたくない。なおさら、ここで切っておきたいという焦りが力みにつながり、ストライクを取りにいったボールが浮いたのだろう。一方の内山は、つなぐという気持ちだけで、キャッチャーらしくストライクを取りにくるストレートを冷静に狙っていたと思う」
 その高めに浮いたストレートを内山が捉えた。打球はレフトスタンドへ一直線。レフトの吉田正は、もう打球を追わなかった。起死回生の同点3ランに満員の神宮球場は、興奮のルツボと化した。日本シリーズでの初打席での代打本塁打は史上5人目の快挙である。
 この回、先頭の宮本が6球粘って右中間に二塁打。続く塩見も四球を選んで、内山の同点3ランをお膳立てした。高津監督がシーズンを通じて語ってきた「粘り強くつなぐ」という野球を体現した。
 星稜高出身の内山は、奥川の1年後輩。当時は巨人にドラフト5位で指名された山瀬が正捕手だったため、バッテリーを組んでおらず、打撃を買われてショートでプレーしていた。捕手に戻ったのは、奥川が卒業後の3年生になってから。ヤクルトにはドラフト3位で指名され、昨年のフレッシュオールスターでは、中日の森から先制本塁打を放ちスターへの“約束手形”とも言われるMVPを獲得、今季は中村の出遅れもあり開幕1軍切符を手にした。

 

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