“強豪”青森山田高の黒田剛監督を新監督に招聘したJ2町田のサプライズ人事は成功するのか…「培った勝利のメンテリティはどのカテゴリーでも失われない」
監督就任にはいっさいの支障はなく、あとはプロ指揮官として結果だけが問われてくる。52歳での転身へ向けて黒田氏が抱く覚悟と決意は、コメントのなかにも反映されている。
「ただ、長きに渡り培ってきた『勝者のメンタリティ』はどのカテゴリーであっても、失われるものではないと信じております」
黒田氏が自負を込めた「勝者のメンタリティ」とは、高校生年代の子どもたちに徹底させてきた勝利至上主義と同義語となる。妥協を許さないイズムがJリーグ仕様となって形を変え、今シーズンは15位に甘んじたチームを変えていった先に町田も悲願のJ1昇格を託す。
市民クラブとして歩んできた町田の歴史は、サイバーエージェントが経営権を取得し、藤田氏がオーナーに就いた2018年10月を境に大きく変わった。12月1日付で町田の代表取締役社長兼CEOに就任が決まった藤田氏も、クラブを通してコメントを発表している。
「2018年にサイバーエージェントが経営に参画してから4年が経ちました。この間にスタジアム、練習場、クラブハウスと、J1で戦える体制はもう整っています。(中略)今後はこれまで培ってきたゼルビアらしさを大切にしつつも、よりスピードアップ、スケールアップをしていくつもりです」
資金面の問題もあり、市民クラブ時代はなかなか手がつけられなかったハード面を4年で整えた。今後はオーナーが社長も兼ねる新体制でソフト面、すなわちトップチームの体制を強化する。J1参入プレーオフに進出できる6位以内に入れる可能性が消滅した9月末に、契約満了に伴うポポヴィッチ監督の退任が発表されたなかで、後任として白羽の矢を立てられたのが黒田氏だった。
青森山田高は1997年度から、25大会にわたって全国高校サッカー選手権の出場を継続している。2016年度大会で悲願の初優勝を果たすと、2度目の頂点に立った2018年度から4大会連続で決勝に進出。今年1月10日の決勝でも大津(熊本)に4-0で快勝した。
徹底して勝負にこだわる采配だけでなく、教え子からはMF柴崎岳(30、レガネス)やDF室屋成(28、ハノーファー96)らの日本代表選手を輩出。今春に旅立った選手でもMF松木玖生(19)がJ1のFC東京でレギュラーを獲得し、MF宇野禅斗(18)は町田に所属している。
育成の手腕をも見込まれた黒田氏はコメントで「これからは、FC町田ゼルビアの勝利のために全力を尽くす所存です」と決意を綴り、さらに次のように続けている。