なぜ打率0割のヤクルト山田哲人は3番から1番の打順変更で復活3ランを放ったのか…勝敗を分けた中村と伏見の配球術の差
日本シリーズの第3戦が25日、京セラドーム大阪で行われヤクルトが7-1でオリックスに勝利、対戦成績を2勝0敗1分けとした。両チームとも大きく打線を動かし高津臣吾監督(53)は不振の山田哲人(30)を1番で起用したが、ズバリ的中。5回二死一、二塁から先制3ランを放ち勝負を決めた。そしてその舞台を作り勝敗を分けた背景には、高橋奎二(25)の6回3安打7奪三振無失点という好投を導いたプロ14年目の中村悠平(32)と1球に泣いたプロ10年目の伏見寅威(32)の捕手リードの“違い”があった。
「凄く責任感の強い男」
監督の信頼と主将の責任。
様々な思いを乗せた白球がレフトスタンドへと舞い上がった。
5回二死一、二塁から山田の鮮やかな復活弾。先制の3ランは、レフトの観客席最前列に当たってグラウンドに跳ね返ってきた。
「真っすぐをしっかりと狙ってミートしようと。ただそれだけ。いい角度で、自分のスイングもできていたので感触はよかった」
ベンチ前では村上が飛びあがって喜んでいる。
高津監督は、山田の目覚めを信じて待っていた。
「凄く責任感の強い男。打っていないことを多少は気にしていたと思う。でも、これで吹っ切れた。明日からをいい形で迎えることができる」
シリーズ開幕戦で4打席連続三振。第2戦も、5打数無安打に終わり、いまだノーヒット打率0割の山田を高津監督は外すことはせず3番から1番に上げた。
その理由を「色々あって」と詳しく明かさなかったが、ヤクルトOBでもある評論家の池田親興氏は、こう分析した。
「責任感の強いバッターなので、走者を置く可能性のある3番よりも、いきなり打席に立つことでプレッシャーが少しでも減って、思い切った積極性が出ることに期待したのでしょう。シリーズは短いようで長いので、打席を増やすことで、復調へのきっかけをつかんでもらえればという考えもあったと思う。実績のある打者は、どんな形でも1本のヒットが出れば変わると言われているし、実際、その前の打席でどん詰まりの内野安打が出たことでホームランを打った打席のスイングが明らかに変わっていた」
山田は3回の第2打席で、宮城のストレートに押し込まれ、バットの根っこで、セカンドゴロを打ったが、あまりにも打球が死んでいたため、ラッキーな内野安打になっていた。
両チームのベンチの戦いは試合前から始まっていた。
昨年の日本シリーズ第2戦でも左腕の高橋に完封を許したオリックスは、2番に安達を入れて、宗を5番に配置転換。3番に吉田正、4番に頓宮を抜擢、2試合続けて3番を任せた中川圭を6番、同じく5番の杉本を7番に下げた。
一方の高津監督は、山田を1番にして塩見を3番。宮本を2番に置いた。
「互いに賭けに出た布陣。結果的に頓宮の4番は失敗だったと叩かれても仕方がないだろう」と池田氏も厳しい見方。4番の頓宮は初回一死二塁の先制機の三振を含む4打数ノーヒットと沈黙した。