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日本シリーズMVPには2度の決勝打を放ったオリックスの杉本が選ばれた(資料写真)
日本シリーズMVPには2度の決勝打を放ったオリックスの杉本が選ばれた(資料写真)

なぜオリックスは26年ぶり5度目の日本一を成し遂げたのか…村上の記録に残らないミスと中嶋監督が作った新時代の勝利方程式

 日本シリーズの第7戦が30日、神宮球場で行われ、オリックスがヤクルトを5-4で下し4連勝で26年ぶり5度目の日本一を手にした。オリックスはシリーズ初となる太田椋(21)の初球先頭打者本塁打で先制。さらに5回に連続バントでヤクルト守備陣の乱れを誘い、二死満塁から杉本裕太郎(31)が放ったセンターへのライナー性の打球を塩見泰隆(29)がなんと後逸。走者一掃のタイムリーエラーで5点差となり、守っては5回無失点の先発の宮城大弥(21)から自慢の“”最強ブルペン陣”へとつなぎ、8回にホセ・オスナ(29)の3ランなどで1点差に詰め寄られたものの最後はジェイコブ・ワゲスパック(28)で逃げ切った。またMVPには、シリーズで2度の決勝打を放った杉本が選ばれた。

 中嶋監督が5度舞う「非常にいい夜空でした」

 

 最後の打者塩見のバットに空を切らせるとワゲスパックはグラブをポーンと神宮の夜空に放り投げた。一塁ベンチでは中嶋監督が頭を抱えて歓喜の瞬間を噛み締めた。胴上げは5度。1996年にイチローを擁して日本一に輝いて以来、26年ぶり5度目のVに準じたのだろう。
「非常にいい夜空でした」
 中嶋監督も感無量だ。
 太田のシリーズ初となるプレーボール本塁打から王手をかけた第7戦は始まった。サイスニードが低めに投じたストレートをすくうようにして捉えてバックスクリーンに運んだ。
 レギュラシーズン143試合で141通りのオーダーを組んだ中嶋監督は、今シリーズでも、毎試合オーダーを変えてきたが、この日は、初めて前日と同じメンバーで臨み、その1番太田がズバリ的中した。
「先制点が欲しいところで、まさかの初球、1点というのは大きいと思いました。 積極性が欲しいところで、バンバン打っていけるバッターが欲しかったので1番に抜擢しました」と中嶋監督。
 オリックスでのコーチ経験もある評論家の高代延博氏は、「まるで26年前に日本一になった仰木マジックを彷彿させるような采配だった。捕手出身の監督らしく、自分のチームの選手だけでなく、相手チームもよく見ていることから生まれる独特の“読み”なのだろう」と、その采配を評価した。
 そしてゲームが動いたのが5回である。
 高代氏は、「この回の3つのミスが勝敗を分けた」と見ている。3つのミスとは、村上の判断ミス、中川への四球、塩見のエラーだ。
 立ち直りを見せたサイスニードからオリックスの先頭、伏見がライト前ヒットで出塁。続く宮城のバントが、チャージしてきた村上の右を抜けていく内野安打となり、無死一、二塁からトップの太田も続けてバントを仕掛けた。三塁線に転がった打球の判断を村上が誤って、捕球しようとせず三塁ベースへと戻り、これも内野安打に変わり、無死満塁となった。
「宮城のバントはたまたまバットの芯に当たって強い勢いのある打球となった。ベンチのサインでチャージしてきている村上が、その横を抜かれてしまったのは仕方がない。問題は続く太田のバントだ。あれは村上の打球判断ミス。記録に残らないエラーだ。三塁手にとって一番判断の難しい打球ではあるが、サイスニードは投げた後に一塁側に体が倒れる。外国人投手に多い傾向だが、それが頭に入っていれば、打球を投手に任せて三塁へ戻るという判断ミスは起こらなかった。たらればだが、確実にひとつアウトを取っていれば、その後の展開もどうなっていたかわからない」と高代氏。
 無死満塁から、宗の一塁ゴロはオスナの好プレーで得点を許さぬ併殺打になったが、中川に四球。二死満塁となり4番の吉田正が、押し出しの死球で1点を追加した。
「痛かったのは、二死二、三塁からの中川への四球だろう。次の吉田正に回したくないという心理が、力みにつながりボールが浮いていた。落ち着かせる努力が必要だったと思う」

 

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