なぜオリックスは26年ぶり5度目の日本一を成し遂げたのか…村上の記録に残らないミスと中嶋監督が作った新時代の勝利方程式
そしてシリーズMVPに選ばれる杉本のセンター左への打球を十分に追いついていた塩見がグラブを差し出しながら後逸。走者一掃のタイムリーエラーとなりスコアは5-0に広がった。
「バットの先で打った打球だったために無回転となり空中で変化があったと思う。それにしても追いついていたのだから痛恨のミス。目測の誤りだが、両手で大事に取りにいこうとする素振りが少しだけ見られた。横の打球に対しては、グラブを持たない右手をしっかりと振って走って追わなければ動きが硬くなる。捕球の瞬間に動きが硬くなって打球の変化に反応できなかった原因のひとつかもしれない」
高代氏は、まさかのミスが起きた理由をこう分析した。
オリックスは6回から自慢の“最強ブルペン陣”を繰り出す。宇田川が2イニング。8回を任された山崎颯は、疲れからか球威不足で、ヤクルト打線につかまり、村上のタイムリー、オスナの3ランで1点差までに詰め寄られたが、ベテランの比嘉が後続を断ち、9回はワゲスパックが三者凡退に抑えて1点を守り切った。
中嶋監督は「何点あっても絶対に追いついてくると思っていましたし、本当に怖いチーム。強かったです」と振り返った。
ヤクルトは、5番のオスナがMVP級の活躍をしたものの、第3戦で3ランを放った山田が、その後、4試合でノーヒット、村上も、この日まで3試合ノーヒットと沈黙。オリックスの4連勝の勢いを止めることができなかった。
だが、高代氏は「オリックスの投手陣がヤクルト打線を不振に追い込んだという見方をしたい。両チームのブルペン陣の層の厚さの違いが、シリーズの明暗を分けたと思う」と分析した。
シリーズの開幕戦を任されたエースの山本が、左脇腹の違和感で降板し、結局、2度目のマウンドに立てなかった。この日は、宮城がプロ初となる中4日登板を余儀なくされたが、5回を無失点に抑え、“最強ブルペン陣”につねげた。4連勝中に起用した中継ぎ投手は、宇田川、山崎颯、比嘉、近藤、平野佳、阿部、ワゲスパックの7人。その間の失点は、この日の4失点と、第5戦の近藤の2失点だけ。中嶋監督は、ゲームによって本田を加えた8人の中から4人を使い分けるという新時代の勝利方程式を駆使した。
中嶋監督は、それらの選手起用について「マネジメントができていたかはわかりませんが、調子の良い選手をどんどん使って全員で勝つということをただシンプルにやっただけ」と謙遜したが、的確に調子と相性を見極め、阿部、本田はシリーズ終盤には起用しなかった。