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拳四朗が「消える右」で京口からダウンを奪う(写真・山口裕朗)
拳四朗が「消える右」で京口からダウンを奪う(写真・山口裕朗)

なぜ拳四朗は衝撃の7回TKOでWBC&WBAの2団体統一に成功したのか…京口を2度ダウンさせた“奥義”「消える右」とは?

 また「消えるワンツー」を仕掛けた。今度は、左も右もヒット。なかば意識を失った京口がバランスを崩すと、そこにトドメの右ストレート。崩れるようにダウンした京口は、あまりのダメージでロープの間から上半身が飛び出てリング外に落下しそうになったが、染谷レフェリーが体を抱きかかえてTKOを宣言した。
 
 3月の矢吹戦で見せたインファイトか、それとも本来のアウトボクシングか。拳四朗がどんな作戦を取るかが焦点だった。
 試合前、加藤トレーナーは「答えられない」と返答していた。結論から言えば、拳四朗が見せたのは、そのどちらでもない。加藤トレーナーの「答えられない」は嘘ではなかったのである。
「僕がファイターだからわかる。ぴょん、ぴょんと飛び跳ねるバックステップを踏むと、京口を前に出させてペースを握らせる。足で地面をつかみ、前に出てジャブで止めて距離を作りたかった」
 つまり、その両方を兼ね備えて進化させたハイブリッド拳四朗である。
 しかも、超ハイテンポ。
「練習からあのテンポでやっていた。プラン通り。当たるときは自由に手を出していいよと言われていたので、弱気にならずどんどん自分のペースでいった」と、拳四朗が言う。
 京口を「一級品。どう対処したらいいか」と悩ませた何種類もある左ジャブから始まり、右ストレート、左右ボディ、左右フックと、次から次へと繰り出したパンチの乱れ打ちは、まるで「北斗の拳」でケンシロウが繰り出す奥義「北斗百裂拳」の実写版だ。
 京口は、ガードを上げたまま固まるしかなかった。当然、手数は減り、京口が狙っていたインサイドにもぐりこんでからのボデイ、アッパーの仕掛けもできない。2ラウンドに少しだけ見せたが、見せ場をそう長くは作らせてもらえなかった。京口の反撃に場内は沸き、壮絶な打撃戦で名勝負となったが、試合内容は、拳四朗のワンサイドだった。

 リング上でマイクを向けられた拳四朗は、「ありがとうごさいます。ホーッ」と奇声を発した。
「ひとことで言うと幸せ」
 心から出た言葉。そして、「このベルトを加藤さんにかけたかった」とWBAのベルトを名参謀の肩にかけた。
 インタビュールームでの会見では「タフで強い選手」と京口へのリスペクトを口にした。
 顔を腫らして額ににたんこぶのようなものができていた京口もまた「悔しいけれど出し切った」と潔く敗戦を認め、「8度防衛したことのあるチャンプ。その強さを肌で感じた」と勝者を称えた。

 

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