なぜ拳四朗は衝撃の7回TKOでWBC&WBAの2団体統一に成功したのか…京口を2度ダウンさせた“奥義”「消える右」とは?
拳四朗は、新型コロナ禍の2年に激動の人生を過ごした。泥酔大暴れ騒動があり、JBCからペナルティを受け、街のゴミ拾いなどのボランティア活動を真剣に行った。再起後、矢吹戦で敗れた。そしてダイレクトリマッチでファイトスタイルを変貌させてのベルト奪還。
加藤トレーナーは「人間的に変わった。あの矢吹戦の敗戦がなければ今日もピンチも乗り越えられずまとめられていたかも」と言い、練習拠点にしている三迫ジムの三迫貴志会長も、こう証言した。
「矢吹戦の敗戦で変わったと思う。今までのヘラヘラしていた部分が一切なくなった。ボクシングへの取り組み方が変わった。過去最高の強さ。まだピークじゃない」
これまで好んで出演していたボクシング以外のテレビ番組や、芸能活動などを一切、封印。試合後のピースサインもやらなくなった。
ーー何がどう変わってあなたは強くなったのか?
そう質問すると…。
「加藤さんのプラン通りにやってるだけ。ただ自信を持って前へ行けるようになった」
拳四朗は、多くを語ろうとしないが、矢吹とのダイレクトリマッチでファイターへの変貌を遂げ、そして京口との「ボクシング人生において大事な試合」と位置づけた2団体統一戦で、さらにワンランク進化した。
挫折を知った男は強くなる。8度防衛を果たしていた時代の拳四朗よりも、30歳を迎えて2つのベルトをまとめた拳四朗が、まぎれもなく強い。
次の目標はハッキリとしている。
セミファイナルで老獪なボクシングで岩田の追撃を翻弄してタイトルを防衛したWBO同級王者ゴンサレスとの3団体統一戦だ。試合後にリング上でゴンサレスも「拳四朗さんと京口さんの勝者と、ここ日本で統一戦をやりたい」と明言。ゴンサレスのプロモーターも「WBOの方針を待ちたい。もしかしたら指名試合があるかもしれないが、我々としては3団体統一をやりたい」と前向きな姿勢を示した。先日プエルトリコで行われたWBO総会で指名試合が滞っていることが問題視されたが、一方で統一戦が優先されるという傾向もある。時期がいつになるにせよ3団体統一戦が現実味を帯びたことは事実だ。
拳四朗は、控室のモニターでゴンサレスと岩田の試合をチェックしていたという。
「やりにくそうな感じはあるけど怖さはない。どうつかまえるかがポイント。自信はもちろんある。つかまえられると思う」
サウスポーのゴンサレスは岩田戦では“当て逃げ”のボクシングを徹底してきた。逃げ足やクリンチを駆使するが、拳四朗であれば、仕留めてしまうだろう。3団体統一を成し遂げれば、バンタム級の3団体統一王者の井上尚弥(大橋)に次ぐ2人目の快挙。そして、その井上が12月13日に挑戦する日本人初の4団体統一王者に拳四朗が続く可能性さえある。
拳四朗は「4団体統一までいける自信がある」と豪語した。
プロ初黒星を喫した失意の京口は「簡単に次また頑張るとは言えない」と進退について保留した。おそらく再起は階級をフライ級に上げることになるだろう。拳四朗は、「僕も一度負けて自信を取り戻した。まだこれから伸びる選手。どこかでいずれ這い上がって欲しい」とエールを送る。2人のライバル物語が、さいたまアリーナに生んだ名勝負というドラマ。2人の勇者が次なる新たなドラマの舞台へと一歩を踏み出すスタート地点でもある。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)