岡田監督はヤキモキ？！阪神の佐藤輝明は侍ジャパンで何かをつかめるか？

侍ジャパンと日ハムの強化試合が5日、東京ドームで行われ、阪神の佐藤輝明（23）が「7番・右翼」でフル出場したが、見逃しの三振を含む3打数ノーヒットに終わった。栗山監督が、今季、打率256、20本塁打に終わりシーズン途中から6番に降格となった佐藤をなぜ抜擢したかは謎だが、佐藤にとっては大チャンス。この日、アベックアーチを放ったヤクルトの“3冠王”村上宗隆（22）や同期の横浜DeNA牧秀吾（24）ら球界を代表する打者から何かを吸収できる大切な時間となる。

史上最年少3冠王の村上から学ぶものとは？

　岡田監督はヤキモキしていた。
「秋季キャンプに合流できるのが1週間くらいしかないからなあ」
　来季のカギを握る最大のキーマンが佐藤と大山。その一人の佐藤が侍ジャパンメンバーに選ばれ、高知・安芸の秋季キャンプへの本格合流が12日からになるからだ。休みを除くと、実質、8日間。
　岡田監督は、大胆な打撃改造を考えているが、「鍛えるのは秋よ」という秋季キャンプでの時間としては、あまりにも短い。
　甲子園での秋季練習では、侍ジャパン前に混乱させることを避けるためにあえて何も手をつけなかった。

　日ハムとの強化試合では「7番・右翼」でスタメン機会を得たが、3打数ノーヒット。その内容は、シーズンの後半同様苦しいものだった。
　最初の打席は2回。日ハム先発の上沢直之にチェンジアップを落とされ体勢を崩してショートフライ。第2打席は、4回一死一塁から目の前で西武の森友哉が強烈な逆転2ランをライトスタンド上段に叩き込んだ直後。左腕の加藤貴之にシュート、フォークと内側から順番に攻められると、最後は外角スライダーを見送って三球三振である。
　最後の打席は6回。またしても、目の前で、アンダースロー鈴木健矢の初見のストレートを村上が見事に捉えてライトスタンドの上段まで運んだ。だが、佐藤は、同じ鈴木に対して、右、左へ正反対のファウルを打った後に、変化球へのタイミングが合わずに一塁ゴロ。
　この日だけで言えば、「ツボに入ったときの飛ばす力が凄い」と、その長打力に期待して侍ジャパンに選んだ栗山監督の期待を裏切った。

　だが、一方で、日ハム、巨人、豪州との計4試合の強化試合で侍ジャパンの1人として行動する7日間で佐藤に起きる“化学反応”に期待する声もある。
　阪神の元チーフスコアラーで北京五輪に日本代表でもスコアラーを務めた三宅博氏は、侍ジャパン体験の「効果は大きい」と指摘した。
「コーチに教えられるより、結果を残している先輩から見て学ぶ、あるいは、何かを質問してヒントのようなものをつかむ絶好の機会だと思う。史上最年少3冠王の村上がいるんだから、どんなバッティング練習をしているのか、ベンチ裏での準備はどうしているか、という点をすぐそばで見るだけで刺激は得るだろう。とにかくタイミングの取り方がバラバラで苦手なボールを意識させられるという悪循環に入っていたのだから、村上は、何を考えているのかというコツを聞いてみればいい。古い話になるが、北京五輪当時は、投手陣では、ダルビッシュ有が、兄貴分のように10代で参加したマー君（田中将大）に野球を教えこんでいた。アジア予選では、ヤクルトの宮本慎也がリーダーシップをとり、相手投手の癖を巨人の阿部慎之助らと一緒になってビデオ研究していた。阿部は戦略的なアプローチを先発の宮本から学んだのかもしれないと見ている」
　佐藤は、前日練習では、村上の逆方向への打撃に関心を示した。
　この日のベンチでは、1回に本塁打を放った同期の牧と並んで話をするシーンが映し出された。牧は球団史上初となる新人からの2年連続20本以上をマーク。出場全試合で4番に座り打率.291、87打点、24本塁打の成績を残して佐藤のそれを上回った。
　2大会続けてWBCでコーチ経験のある評論家の高代延博氏も、「侍ジャパンに合流することで佐藤が得るものは大きい」という意見を持つ。
「村上のスイングを近くで観察して何を思うか。佐藤の取り組み次第。後ろが大きくバットが下から出て、打ち損じの多い佐藤と、ほとんどテイクバックにぶれがなく、一発で仕留める村上とのスイングの比較を目の前で見て自分で行うべきだろう。真似はできないだろうが、佐藤のボールを遠くへ飛ばす能力は村上にだって負けていない。今回の侍ジャパンシリーズで、何かのヒントを得て、秋季キャンプで岡田監督から教えられるものを自分の中で消化すればいいと思う。いずれにしろ佐藤にオフはない」
　今回のシリーズはオリックスの吉田正尚やソフトバンクの柳田悠岐ら故障を抱える選手が選ばれなかったため、佐藤にチャンスが巡ってきた。だが、来年3月の本番では故障者が出ない限り経験の少ない佐藤の選出は難しいだろう。それだけに今回の侍ジャパン合流を単なる思い出作りで終わらせては意味がない。チームは今日6日は東京ドームで巨人戦。9、10日と札幌ドームで合流と対戦する
（文責・RONSPO編集部）