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横浜F・マリノスのDF岩田智輝がMVPを初受賞(写真:千葉 格/アフロ)
横浜F・マリノスのDF岩田智輝がMVPを初受賞(写真:千葉 格/アフロ)

JリーグMVP史上最大の苦労人がサプライズ受賞…横浜F・マリノスDF岩田智輝…プロキャリアはJ3から

 Jリーグの年間表彰式、Jリーグアウォーズが7日に東京都内のホテルで開催され、3シーズンぶり5度目の優勝を果たした横浜F・マリノスのDF岩田智輝(25)が最優秀選手賞(MVP)を初受賞した。DF登録選手のMVP獲得は、2006シーズンの田中マルクス闘莉王(浦和レッズ)以来、16年ぶり4人目の快挙。2016シーズンにJ3の大分トリニータでデビューした岩田は、すべてのカテゴリーでプレー経験を持つ初めてのMVPにもなった。

 「まさか選ばれるとは思っていなかった」

 

 人生最大のサプライズが待っていた。しかも、一度ではなく二度も。今シーズンのJリーグアウォーズが開催された東京都内のホテル。優勝したマリノスのチームメイトたちともに、黒色のタキシード姿で出席していた岩田が、まずベストイレブンに選出された。
「まさか選ばれるとは思っていなかったので、すごく嬉しいです。試合に出るからにはチームの勝利のために、しっかりと責任を果たしたいと思ってきました。最高のシーズンでした」
 初々しい受賞スピーチから十数分後。ベストイレブンのなかから、今シーズンのMVPが発表される。司会を務めた元日本代表FW福田正博さんが「いわた・ともき」と読み上げた。
 まばゆいスポットライトを壇上で浴びながら、今度は一人だけでマイクを握ったスピーチ。やや緊張した口調の合間から、岩田が抱く万感の思いが伝わってきた。
「僕はプロのキャリアをJ3からスタートさせました。そんな僕がまさか今シーズン、リーグ優勝して年間MVPも受賞するとは思ってもいませんでした。いまでも夢のようです。これまで頑張ってきて本当によかったと思っています。努力が報われました」
 異色に映るこれまでのサッカー人生が、走馬灯のように脳裏を駆けめぐる。
 大分県宇佐市で生まれ育った岩田は、2人の兄の影響を受ける形で、3歳のときにサッカーを始めた。中学年代からは大分のアカデミーに加入。特に高校生年代の大分トリニータU-18では、ゴールキーパーを除いたすべてのポジションでプレーした。
 ポジションが定まらなかったわけではない。既存の枠に収まらない、岩田の稀有なセンスを見抜いた大分側が、将来に備えてさまざまな経験を積ませる英才教育だった。そして、高校3年生となり、いよいよトップチーム昇格が迫ってきた2015シーズン。大分はJ2リーグで21位に終わり、FC町田ゼルビアとのJ2・J3入れ替え戦でも連敗を喫してしまった。
 J1を経験したクラブが、J2をへてJ3へと降格するのは当時で史上初の屈辱だった。しかし、大分は災い転じて福と成すとばかりに、岩田をはじめとする若手有望株を2016シーズンのJ3リーグで積極的に起用。結果と育成の二兎を追う片野坂知宏監督(前ガンバ大阪監督)のもと、大分は2017シーズンにJ2へ、2019シーズンにはJ1への復帰を果たした。
 実はこの段階ですでに、マリノスは大分で複数のポジションでプレーする岩田に注目していた。迎えた昨シーズン。2年越しのオファーを受諾した岩田はマリノスへ完全移籍。2年目の今シーズンは、大分時代に培われた岩田のマルチロールぶりがマリノスに欠かせない武器となった。
 開幕からボランチ、サイドバック、センターバックとチーム事情に合わせてプレーした岩田の主戦場は、シーズン中盤からはセンターバックに固定された。身長178cm体重77kgの体に搭載された対人守備の強さと豊富な運動量、攻撃参加時のセンスでマリノスを縁の下で支えた。

 

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