JリーグMVP史上最大の苦労人がサプライズ受賞…横浜F・マリノスDF岩田智輝…プロキャリアはJ3から
リーグ戦における出場32試合、プレー時間2715分は、いずれもマリノスのフィールドプレーヤーではトップに立つ。リーグトップの総得点70を叩き出すなど、攻撃力がシンボルとなった今シーズンのマリノスは、実は総失点35も名古屋グランパスと並んでリーグ最少をマーク。堅守の原動力になった岩田こそがMVPにふさわしいと判断された。
J1リーグの選手表彰は、全18チームの監督、今シーズンで17試合以上に出場した選手たちによる互選を実施して、30人で構成される優秀選手賞をまず決める。この段階ではカタールW杯代表のDF谷口彰悟(31)が218票、MF家長昭博(36)が217票を獲得。リーグ戦で2位だった川崎フロンターレ勢が1位と2位を占め、岩田は152票で全体の3位につけていた。
優秀選手賞を受賞した30人のなかから、野々村芳和チェアマンをはじめとする選考委員会内で投票を実施。ベストイレブンがまず選出され、そのなかからMVPが選ばれる仕組みになっている。
アタッカーが脚光を浴びやすい傾向にあったMVPで、DF登録選手の受賞は過去に3度しかない。1994シーズンのペレイラ(ヴェルディ川崎)、2004シーズンの中澤佑二(マリノス)、2006シーズンの闘莉王に次ぐ16年ぶりの快挙であり、日本代表の最終ラインにも君臨した中澤と闘莉王とタイトルの上で肩を並べた岩田は、はにかみながら言葉を紡いだ。
「本当に光栄ですし、いまでも信じられないですけど、来シーズンからはこの賞を受け取った選手という目で見られる。そこはしっかりと責任感を持って、もっともっと成長していきたい」
岩田が達成した快挙はこれだけにとどまらない。
これまでの延べ29人の歴代MVPで、受賞前にJ2でプレーした経験を持つ選手は意外と多い。闘莉王をはじめ、2012シーズンのFW佐藤寿人(サンフレッチェ広島)、2014シーズンのMF遠藤保仁(ガンバ大阪)、2016シーズンのMF中村憲剛(川崎)ら10人を数える。
しかし、これがJ3でのプレー経験となると、2016シーズンで23試合に出場している岩田が初めてとなる。J3の創設が2014シーズンと、まだ歴史が浅い点も関係しているかもしれない。それでもわずか7年で、J3からJ1のMVPに駆け上がった岩田の軌跡はまばゆい輝きを放つ。