現地で聞く…浅野と板倉が負った故障の本当の回復度合い
しかし、メンバー発表前で最後の代表活動となった、9月のドイツ遠征を直前に控えて離脱を強いられる。そして、右膝に大怪我を負った直後から、浅野のインスタグラムへの投稿にポジティブな言葉が目立つようになった。意図的に明るく振る舞っていたと、いまだからこそ打ち明ける。
「人事を尽くして天命を待つ、でした。自分にやれることはないぐらいやったつもりではいたので、あとは森保監督の判断に委ねるしかなかった。最後の最後まで、僕の中では五分五分かなと思っていました。なので、ある意味でそういう投稿とか、怪我を治します、というアピールしか僕にはできなかった。それも含めて、いまにつながっているのかな、と」
今シーズンから所属するボルシアMGで、板倉はセンターバックとして一気に評価を高めた。万全な状態に戻れば板倉をセンターバックで、冨安健洋(24、アーセナル)を左サイドバックに回す布陣も可能になる。さらにボランチでもプレーできる板倉は、森保ジャパンの攻守を司る遠藤航(29、シュツットガルト)と守田英正(27、スポルティング)に次ぐ存在になる。
カタールW杯での戦法を堅守速攻に定めた森保一監督(54)の構想のなかで、スピードを武器とする浅野は前田大然(25、セルティック)と並んで1トップのカギを握る。攻守のキープレーヤーが懸命にリハビリを積み重ね、ともに初めて臨むW杯の夢舞台へ間に合わせた。
4度の優勝を誇る強敵、ドイツ代表と対峙する23日のグループリーグ初戦の前に、17日にはカナダ代表とのテストマッチが舞台をUAE(アラブ首長国連邦)のドバイに移して行われる。
「もちろん監督次第だと思いますけど、僕自身はカナダ戦へ万全な状態で、という思いで来ているので。実際にカナダ戦に出場できれば間違いなくコンディションが上がってくる、と感じているし、ドイツ戦の前にこうしてみんなと一緒にできる機会があるのはすごくいいと思っています」
浅野の思いもくみ取るように、板倉がカナダ戦を介してドイツとの大一番を見すえた。強度が一気に高まる代表戦へのプレーには、一抹の不安が残るかもしれない。しかし、それらを吹き飛ばすほどの熱量を体内に脈打たせながら、板倉と浅野は練習でかかる負荷を上げていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)