歴史的勝利から一夜明けてヒーローの1人堂安律が「昨日の結果は忘れた方がいい」と語る理由とは…“落選”原口元気から背番号「8」を託された裏話も
迎えた今月1日。カタールW杯に臨む日本代表メンバー26人のなかに堂安も名を連ねた。ほどなくして背番号を日本サッカー協会から打診された。まさかの落選となった原口が、3試合に出場して1ゴールを決めた前回ロシア大会を含めて、長く象徴としてきた8番だった。
「(原口)元気君に何も聞かずにつけることはできなかったので、ちょっとやり取りをして。元気君は前回大会で点を取っているし、縁起のいい背番号だと思って『その運を僕にもちょっと分けてください』といった話もしながら、8番をつけさせてもらいました」
やり取りを締めくくるように、原口は8番についてこう語ったと堂安は明かす。
「律につけてほしい、と。元気君はそう言ってくれました」
魂が込められたバトンを、堂安もしっかりと握り締めた。そして、背中の8番を通じて原口の思いをも背負った堂安が、世紀の番狂わせへの序章となる同点ゴールを叩き込んだ。ロシアからカタールへ、W杯を結びつける4年越しのドラマが紡がれた瞬間でもあった。
しかし、日本はカタールの地でまだ何も成し遂げていない。中3日で迎える第2戦の相手コスタリカは、23日のグループステージ初戦でスペインに0-7の大敗を喫した。それでも堂安は「昨日の結果は忘れた方がいいと思っている」と表情を引き締める。
「一見するとメンタルがやられてて弱気になって、日本にとって有利だと思われがちですけど、W杯は本当に夢の舞台なので。もうあきらめる、という国や選手は世界中のどこにもいない」
ともに優勝経験のあるドイツ、スペインと同組になった時点で、日本は第2戦での勝ち点3ポイント獲得を決勝トーナメント進出への絶対条件として掲げた。初戦で日本がドイツを破り、コスタリカが大敗を喫しても、第2戦へ臨む上でのスタンスはまったく変わらない。
コスタリカを甘く見た試合運びは厳禁。断崖絶壁に追い詰められ、それでも生き残ろうとがむしゃらに勝利を求めてくる相手をしっかりとリスペクト。その上で確実に勝利を手にする90分間に求められるマインド設定が、堂安の言葉のなかに凝縮されている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)