なぜ長友はコスタリカ戦の敗戦で起きた伊藤ら若手へのバッシングの”壁”になることを宣言したのか…「すべての批判を受ける覚悟」
コスタリカに痛恨の黒星を喫し、通算成績が1勝1敗となった直後から、伊藤だけでなくあらゆる選手に声がけをしてきた。かけた言葉の中身については「僕がこの場で言う必要はないと思う」としながらも、彼らの胸中を慮りながら長友は努めて前を向いた。
「日本代表としての経験もそこまで多くないなかで、W杯でプレーするのはかなり難しいと思うんですよ。それでも、(伊藤)洋輝を含めた多くの若い選手が経験できたのは、ここから総力戦で決勝トーナメントへ勝ち上がるなかで非常に大きな価値がある。日本ではおそらく批判も多く、ドイツ戦後とは真逆の状態になっていると思うけど、スペイン戦で絶対に突破してみせます」
ポジティブな思考回路が“デジャブ”を導いたと長友は笑った。
スペイン戦へ向けて再始動した練習を終え、ストレッチを行っているときに、フィジカルコーチから「仰向けになって10分間、頭を空っぽにしてみよう」と指示が飛んだ。すっかり日が暮れたドーハの夜空に、自らが勝利の儀式を行う光景が浮かんできたと長友は再び笑った。
「スペイン戦が終わった後に、僕がめちゃくちゃでかい声で『ブラボー』と叫んでいるんですね。これは現実になる、と。僕の場合、いままでこうなったときは、ほぼ現実のものになってきたので。とにかく他力ではなく自力で突破できるところで、僕はスペイン戦にすべてをかけます。そして、ドイツ戦のような戦いができれば必ず結果が出ると信じて戦います」
日本が勝てば無条件でグループステージ突破が決まり、引き分けならばドイツ対コスタリカの結果に委ねられ、負ければ自動的に敗退が決まる運命のスペイン戦へ。12月1日22時(日本時間同2日午前4時)のキックオフ直前まで、長友は自身の調整と同時進行で日本代表へ向けられる批判のすべてを吸収しながら、後輩たちが思う存分に能力を発揮できる環境を整えていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)