なぜスペイン監督は「2位狙い説」を完全否定したのか…「我々のボール支配率は高いかもしれないが日本戦はタフは試合になる」
現状ではグループEの全チームに、決勝トーナメント進出の可能性が残されている。初戦でスペインに0-7の大敗を喫したコスタリカも、第2戦で日本を1-0で撃破して息を吹き返した。
実際に最終戦でスペインが日本へ勝ちを譲った場合、グループEのもう1試合でコスタリカが勝てば、勝ち点が6ポイントとなってスペインの4ポイントを上回る。ドイツが大勝すればスペインと4ポイントで並び、この場合は得失点差の争いへともつれ込む。
ドイツとコスタリカが引き分ければ、日本に負けても次のステージへ進める。しかし、自分たち以外の試合はコントロールできない、とばかりにエンリケ監督は言葉を紡いだ。
「ハイレベルなスポーツでは、思索にふけることなど不可能だ」
意図的に順位が操作された試合として、W杯の歴史に大きな汚点を残したのが1982年スペイン大会の1次リーグ、西ドイツ対オーストリアのグループ2最終戦となる。
初戦で初出場のアルジェリア代表に1-2と金星を献上した西ドイツ代表は、続くチリ代表との第2戦で4-1と大勝。オーストリアはチリを1-0、アルジェリアを2-0で危なげなく下していた。
迎えた第3戦は前半10分に西ドイツが先制して以降は、両チームともに攻める姿勢をまったく見せないままタイムアップ。すでにチリを3-2で破っていたアルジェリアを加えた3チームが2勝1敗で並んだなかで、得失点差で最も劣ったアルジェリアの敗退が決まった。
世紀の凡戦はフェアプレー精神を著しく欠いた談合試合として厳しく非難され、アルジェリア対チリが前日に組まれていた日程と合わせて問題視された。その結果として、1986年メキシコ大会からグループステージ最終戦は同日同時刻のキックオフで行われている。
前回ロシア大会のグループH最終戦では、ポーランド代表に0-1とリードされた日本が、残り10分あたりからあえて敗戦を受け入れる試合展開を選んだ。
同時間帯に行われていた一戦で、コロンビア代表がセネガル代表を1-0でリード。ともにこのまま終われば日本とセネガルが1勝1分け1敗の勝ち点4、得失点差0、総得点4、引き分けだった直接対決ですべて並び、フェアプレーポイントで上回る日本が決勝トーナメントへ進む。
淡々とした試合展開には、当然ながら日本国内を含めて賛否両論が渦巻いた。西野朗監督の異例の決断のもとで日本は2位を死守。終了間際の失点で2-3と敗れたものの、決勝トーナメント1回戦ではベルギー代表と死闘を演じている。他会場の試合結果にすべての望みを託した点で、稀有なケースといっていいだろう。
今大会のグループEの最終戦も、ともに1日22時(日本時間2日4時)にキックオフを迎える。スタッフを派遣してリアルタイムで状況を得られても、試合の行方は誰にもわからない。だからこそ「思索にふけることなど不可能だ」と断言したエンリケ監督は、さらにこう続けた。
「加えて、フットボールにおいて簡単な側など存在しない。われわれは一番になるためにこの大会へやって来た。ブラジルはどの大会でも常に優勝候補だが、われわれがW杯で頂点に立つためには、最終的にはブラジルを含めたすべての強者を打ち負かしていかなければいけない」