なぜスペイン監督は「2位狙い説」を完全否定したのか…「我々のボール支配率は高いかもしれないが日本戦はタフは試合になる」
実際に2位で通過しても、おそらく準決勝で連覇を目指すフランス代表か、好調のイングランド代表と対戦する。W杯のベスト8以降は、必ずといっていいほど強豪国が待つ。遅かれ早かれ顔を合わせるのであれば、スペインはグループEの、ブラジルはグループGの1位突破国として対峙して打ち破ればいい。自らが率いるチームに抱く絶対的な自信が伝わってくる。
しかし、日本戦に臨む先発メンバーの変更はありうる状況だ。
コスタリカとの初戦から、エンリケ監督は右サイドバックをセサル・アスピリクエタ(33、チェルシー)からダニ・カルバハル(30、レアル・マドリード)へ代えた以外は同じ先発陣でドイツとの第2戦に臨んだ。先制しながら追いつかれ、そのまま1-1で引き分けた第2戦の前半44分には、アンカーのセルヒオ・ブスケツ(34、バルセロナ)がイエローカードをもらっている。
公式会見では累積警告による出場停止のリスクを回避させるために、ブスケツを先発から外す方法もあるのではないかという質問も飛んだ。ドイツ戦後に別メニュー調整が続き、スペインメディアで日本戦の欠場が報じられているMFロドリ(26、マンチェスター・シティ)とMFガビ(18、バルセロナ)の状態と合わせて、エンリケ監督は慎重な言い回しに終始している。
「まだトレーニングがあるので、現段階で先発メンバーは決めていない。26人もの選手がいるので、彼らがプレーできない場合は違う選手がプレーする。ただ、2人ともリスクを冒す必要はない」
顔ぶれこそ異なるものの、昨夏の東京五輪準決勝では同じ[4-1-2-3]システムでプレーするU-24スペイン代表が、森保監督に率いられるU-24日本代表に勝利している。
前後半の90分間を終えて0-0のままスコアが動かず、PK戦もちらついてきた延長後半10分に、今大会にも招集されているFWマルコ・アセンシオ(26、レアル・マドリード)の決勝ゴールで振り切った一戦に感銘を受けたと、エンリケ監督は公式会見で語っている。
「明日はタフな試合になるだろう。われわれの方がボール支配率は高いかもしれないが、日本はダイナミックに走れるチームであり、ハイプレスも仕掛けてくる。加えて多くの選手がヨーロッパで活躍しているし、そのなかには久保もいる。それでも、われわれは勝つことしか考えてない」
決勝までの全7試合にすべて勝利して2度目の頂点に立つ、という目標こそドイツの意地の前に阻止された。それでも瞬時に気持ちを切り替えたスペインは伝統のボールポゼッションに、エンリケ監督が植えつけた、失ったボールの即時奪回という牙を研ぎ澄ませて日本の前に立ちはだかる。
(文責・藤江直人/スポーツライター)