なぜドーハの歓喜は2度起きたのか…スペインに逆転勝利の裏でハーフタイムのロッカー内に響き渡った言葉とは?
主審は当初、三笘が折り返す前にボールがゴールラインを割ったと判断した。しかし、直後にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入。オンリーレビューの結果、ボールのほんの一部がゴールライン上にかかっていたため、インプレーでの逆転ゴールだと認められた。
「1ミリでも(ゴールラインに)かかっていればいいなと思っていましたし、(ゴールが)入った後は(自分の)足がちょっと長くてよかったと思いました」
三笘がジョーク混じりにVARを待っていた約2分間の心境を振り返れば、川崎市立有馬中学校の一学年後輩であり、スペイン戦のMOMに選出された田中も続いた。
「最初の律のクロスに(スピードのある)大然君と薫さんが走っていったので、何とか残るんじゃないかなと信じて走り込んでいきました。気持ちで押し込んだとかではなく、あの位置に入り込んでいくのは自分がずっとやってきたプレー。それで上手く結果を残せてよかったです」
逆転に成功してからは、前からのプレスがあるとちらつかせながら、前半と同じ[5-4-1]のブロックへ移行。時には体を張り、GK権田修一(33、清水エスパルス)のファインセーブも飛び出したなかで、スペインのパスワークを最後まで封じ込めた。
勝利までの過程では後半23分に右太もも裏を痛めていた冨安健洋(24、アーセナル)を右ウイングバックで投入。同42分には右膝痛で先発から外れていたボランチ遠藤航(29、シュツットガルト)を送り出し、そのたびにドイツが4-2でコスタリカを下した一戦の経過を伝えた。特に遠藤は「絶対に引き分けは許されない」というメッセージとともに、チームに最後の力を与えている。
「ブロックを作ればドイツでもスペインでも崩すのは難しい、という分析もあったので」
代表スタッフの分析が、自信という目に見えない力も与えてくれた。こう感謝した吉田は、W杯優勝経験国を連破してのグループEの1位通過を喜びながらも、グループFで2位に入った前回大会の準優勝国クロアチアと対戦する、5日(日本時間6日未明)のラウンド16をみすえる。
「僕たちの3試合を向こうも分析してくるなかで、分析のイタチごっこが始まる。さらにいい準備と分析をして、オプションを3つぐらいまで持っていかなきゃいけないんじゃないか」
優勝候補のスペインからあげた逆転勝利に、堂安は「これで1戦目が奇跡ではなく、必然で勝ったと国民のみなさんに思ってもらえる」と胸を張った。しかし、世界を驚かせた快進撃も森保ジャパンにとっては通過点。まだ見ぬベスト8以降の扉を、4度目の挑戦で初めてこじ開けるために。チームは一夜明けた2日を急きょオフにあて、疲れ切った体につかの間の休息を与える。
(文責・藤江直人/スポーツライター)