W杯16強の壁を破るのに何が足りなかったのか…三笘、吉田、鎌田、伊東らの涙と言葉から紐解く“答え”とは?「その先に行こうと考えると…」
クロアチアの選手と競り合いながら、吉田が必死に右足をボールに当てる。ニア方向にこぼれてきたボールに、誰よりも早く反応した前田が左足を一閃。森保ジャパンでほとんど武器になっていないと酷評されてきたセットプレーに工夫を加えて、日本が幸先よく先制した。
通算4度目の決勝トーナメント1回戦で、日本が先にゴールを奪ったのは2度目。ベルギー代表と対戦した前回ロシア大会は後半3分、同7分と怒涛の連続ゴールを奪ったが、吉田は「4年前は逆にきつかった、という感覚だった」と先制した後に抱いた思いを明かす。
「それが今回は、日本の特徴を出せる選手がそろっていて、チャンスが増えてくるんじゃないかという感覚があった。後ろとしては我慢に我慢を重ねるだけだと思っていたけど、クロアチアもしっかり研究していて、(三笘)薫の前のスペースもかなり埋めていた」
後半10分に許した同点弾は、日本から見て左サイドから上げられたクロスに対してゴール前におけるマークがぼやけた隙を突かれ、警戒していたFWイヴァン・ペリシッチ(33、トッテナム・ホットスパー)に頭で決められたものだった。しかし、圧力をどんどん増してきたベルギーに屈し、3連続失点で逆転負けを喫した4年前のような脆さは、日本に最後まで見られなかった。
GK権田修一(33、清水エスパルス)のファインセーブもあり、逆転を許さなかった日本は、しかし、勝ち越しゴールも奪えなかった。吉田が振り返ったように、ジョーカーの三笘が投入された後半19分以降のクロアチアは人数をかけて、得意のドリブルで侵入してくるスペースを消した。
延長戦を含めた120分間を戦い終えた瞬間に、伊東が抱いた思いがすべてを物語っていた。
「やはり延長戦になると自分だけじゃなくて、みんなもきつかった。相手のサイドバックも足がつりかけるなど、かなり疲れていた。そのなかで奪ったボールを繋いで、ショートカウンターでチャンスを作ってPK戦になる前に決めたかったんですけど……残念です」
公式記録上ではクロアチア戦は引き分け扱いとなる。次の準々決勝へ進むチームを決めるための手段が、運にも大きく左右されるPK戦となる。つまり、公式記録上の引き分けを勝利に変えられなかった点が、4度目の挑戦でまたもやベスト16の壁を越えられなかった理由となる。
今大会はグループEの初戦でドイツ、最終戦ではスペインを撃破。W杯優勝経験を持つ強豪国と同居した「死の組」を1位で突破しただけに、過去にベスト16へ進出した3大会より期待値は高かった。しかし、クロアチア戦後にそうした考え方を真っ向から否定したのが鎌田だった。
「もちろん勝利しましたけど、じゃあ彼らと対等だったのかと言われると間違いなくほど遠い。今大会はこのやり方で自分たちが目指してきた場所まで上手くたどり着けそうでしたけど、その先へ行こうと考えたときには、もっとポゼッションができないとダメだと思う」