今日開催のプロ野球「現役ドラフト」への期待と不安…「球団の任意選出」「1軍確約なし」など問題点を指摘する意見も
ルール5ドラフトは獲得した選手を翌年のシーズンにアクティブロースターと言われる1軍枠に登録し続けなければならないという規則がある。球団サイドがウェーバー公示をすれば、ロースター外とすることは可能だが、基本的には、獲得した選手の1軍起用を約束するのだ。だが、日本の場合は、そこまでの規定を設定することはなかった。
「各球団は、リストの中から戦力の薄いところを埋めようとするでしょうが、1軍起用の規定がないので、結局、移籍しても同じように試合出場チャンスが増えないということもありえる」と里崎氏は危惧する。
また里崎氏は、「育成選手を対象とするべきだったのでは?」と主張する。
「現役ドラフト、あるいは、FAの人的補償では、育成選手が対象外となっているので、本来であれば、怪我などがあっても育成契約にしないような選手を育成契約にして“育成隠し“と思われるような動きもある。現役ドラフトの対象に、育成選手も入れ、育成選手を獲得した場合は支配下登録しなければならないというような規定を加えると活性化する可能性もあったのでは」
現役ドラフトが、支配下登録枠の70人に影響を与えるのではないか?という意見もある。2日に各球団の来年度の保留名簿が発表されたが、まだドラフト指名選手、新外国人選手がプラスされておらず、育成から支配下登録される選手もいるので、正確な数字は不明。しかし、現時点では、どの球団も現役ドラフトで1、2人の枠が左右することを想定して70人枠に余裕は持たせてあるようだ。
過去には1970年に通称トレード会議と呼ばれた「選抜会議」が実施された。支配下選手の20%が対象で年俸に100万円、200万円をプラスする金銭トレードだったが、わずか3年で頓挫。1990年にはFAが導入される前の代案として「セレクション会議」が開催された。1軍33人とプロ入り3年未満の選手が対象外とされ、残った選手から移籍希望選手をリストアップしてトレード交渉を会議で行うというものだったが、1回目は成立がなく、2回目に3件のトレードが成立したが、2年で現役選手登録28人に5人を加えた「1軍要員の33人」とプロ入り3年未満の選手がプロテクトされ、残った選手の中から、移籍を希望する選手を各球団がリストアップ。第1回は約20人が対象となったが、トレードは成立しなかった。11月1日の第2回では、島田誠氏(日本ハム)と坂口千仙氏(ダイエー)など3件のトレードが成立したが、当時ダイエー監督だった田淵幸一氏が広島の放出リストを口外して大問題となり、結局、2年で終了して定着しなかった。
里崎氏が、こう警告を発する。
「選手会の要望に応えた形での導入だと思うが、形だけで実質の中身が伴っていなければ、出場機会のない選手の移籍を活性化するという目的は達成できないと思う。今回、1度やってみて、その結果を見て、運用効果が生まれる形にルールに修正を加えていくことが必要でしょう」
いずれにしろ今回の現役ドラフトの成否は、移籍した選手が来シーズンにどのような活躍をするかを見なければわからない、現役ドラフトの答えが出るのは、早くても1年後。「出場機会のない選手の移籍を活性化させる」という本来の目的が達成されるまで、ルールを検証して改正を続ける必要があるのかもしれない。
(文責・RONSPO編集部)