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一夜明け会見で井上尚弥は4団体を統一したバトラー戦の内幕とスーパーバンタム級挑戦への思いを語った(写真・山口裕朗)
一夜明け会見で井上尚弥は4団体を統一したバトラー戦の内幕とスーパーバンタム級挑戦への思いを語った(写真・山口裕朗)

2キロ弱の壁…歴史を塗り替えた井上尚弥のスーパーバンタム級への転級は成功するのか…「すぐに挑戦したい。2階級4団体統一へ。戦い方を変える必要がある」

 真吾トレーナーは「フィジカル強化」の必要性を説く。
「技術は問題ない。後は筋肉をつけてしっかりと肉付けすること」
 そしてもうひとつ危惧するのはKOを期待するファンの声にこたえることができるかどうかという問題。真吾トレーナーは「スピードとテクニックでポイント勝負なら勝てる。それでファンに納得してもらえるかどうか」と言う。実際、6階級を制覇したマニー・パッキャオ(フィリピン)や5階級を制覇したフロイド・メイウェザー・ジュニア(米国)という“レジェンド”“でさえ階級を上げてKO率が下がった。だが、そこで彼らの人気が下がったわけはなく、バトラー戦が象徴するように、単なる勝ち負けではなく、勝ち方を求められてきた井上にとって、その呪縛から解放されるチャンスではある。
「勝ち方にとらわれるから苦しくなる。スーパーバンタム級でのトップ戦線での戦いは勝ちに徹することが重要。階級制のスポ―ツにおいて、この体格でスーパーバンタムに挑むことは、もう勝ち方ではなくなっている。組み立てて、ボクシングをすることが大事。気の抜けないスリリングな試合になってくるし、そういう試合になれば見てる人もワクワクしてくれると思う」
 井上が追究したいボクシングができる舞台がスーパーバンタム級であり、バンタム級で失いかけていた勝負師としてのモチベーションを取り戻すことができるステージなのだ。プロ入りする際、井上が、大橋ジムにただひとつ条件としてつけたのが「強い相手とのマッチメーク」だった。
 そして井上は、そのステージでの目標をこう掲げた。
「また統一を目指してやっていく方向になる」
 世界では過去に4団体統一王者は8人いるが、2階級にまたがってベルトを4つ集めたボクサーは一人もいない。
――それを成し遂げた時があなたのゴールになるのですか?
 そう質問すると、井上は、ニヤリと笑った。
「それが引退を考えている35歳頃ならゴールになるが、パフォーマンスが低下しない限り、すべてが通過点。仮に4団体を統一した今、引退するなら、最高のボクサーで終わるんだろうけど、僕は挑み続けたい。どこまでいけるか、体力の限界が来るまでくるまで挑戦したい」
 前日の有明アリーナは超満員の1万5000人のファンで埋まった。
「スーパーフライ級の防衛戦では有明コロシアム(有明アリーナとは別の会場)を超満員にできない時代が続いていた。積み重ねてきて、これだけの会場を満員にできた。(配信した)dTVの加入者の数字などを見ると、やってきたことは正しかったと思う。これから自分がどういう試合をするか。これ以上の景色はないし、あの景色を見続けれるように頑張りたい」
 来年4月で30歳になる4団体統一王者が、作りあげようとしているボクシング新時代は、ここからさらに面白くなってくる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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