井上拓真は兄が統一したバンタム級の世界ベルトを継承できるのか…前哨戦で示したモンスター化「パンチが当たらない」の尚弥証言
拓真はリング上で「自分の適正階級はバンタムだと思っているので、兄が階級を上げたら、自分がまた1つ1つ集めていけたらいいなというのが今の目標です」と宣言した。兄が成し遂げた4団体統一を継承しようというのだ。これまでの世界再奪取から目標がグレードアップしていることに正直、驚いたが、その発言の理由をこう説明した。
「世界チャンピオンになる目標より、もっと高い目標を掲げた方がそれに向けて自分も成長できると、ここ最近、感じている。目標は高くという意味で言った」
その志や良しである。拓真のモンスター化には、そういう内面の変化も影響していたのかもしれない。
来年スーパーバンタム級へ転級する兄の尚弥は、どこかのタイミングでバンタム級の4つのベルトを返上する予定。つまり4団体で、王座決定戦が行われ、世界で8人のボクサーに世界挑戦のチャンスが転がりこんでくることになる。WBCは、すでに空位となることを想定して尚弥に2度敗れた前WBC王者のノニト・ドネア(40、フィリピン)と、これまた尚弥に倒された同級1位のジェイソン・モロニ―(31、豪州)による王座決定戦を内定。4つのベルトを巡る動きが出始めている。
拓真は、現在WBAの2位。1位が不在なので拓真が王座決定戦への出場権利を得る可能性が高い。その場合、同3位はドネアなので4位のリボリオ・ソリス(40、ベネズエラ)が有力候補。元WBA世界スーパーフライ級王者の大ベテランで、河野公平氏、亀田大毅氏、山中慎介氏と対戦しており、山中氏には倒し倒されの大激戦の末に判定で敗れている。
飯田氏は、「もしこの2人で王座決定戦が実現するのならば、ソリスは前に出てくるので拓真選手とは噛み合う。勝つチャンスは十分にあるし、ファンを楽しませる好カードになると思う」と言う。
来年になれば、IBF、WBOでも拓真が上位にランキングされる可能性もあり、ターゲットは、流動的ではあるが、元WBC世界バンタム級暫定王者の肩書を持つ拓真に優先的に挑戦権が回ってきても不思議ではない。
「ダメージゼロ。いますぐ練習できる」
2023年には井上兄弟2階級同時世界王者の夢が叶うのかもしれない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)