侍ジャパンにメジャー“MVP男”イエリッチ招集プランが浮上…その背景とは?
さて、今回、なぜそんな話を思い出したのか。
先日、サンディエゴで行われたウインターミーティングに侍ジャパンの指揮を執る栗山英樹監督が姿を見せ、WBC関連の会見に出席。そこで、日本にルーツを持つ大リーガーの招集について、「今回、実をいうと、5、6人、可能性のある選手にアプローチさせてもらった」と明かした。
「ルールの問題を確認していますけど、お父さん、お母さんのレベルでしかっていうルールになっているので、可能性が少ない」
実は今回、WBCが始まった頃に比べて、ルールが厳格に適用されるようになったとのこと。しかし、栗山監督にはこんな思いがある。
「野球がもっともっと発展するために、グローバルな形がこれからの野球の姿として必要になってくる」
日本代表にそうした選手が加われば、刺激にもなる。また、見る側にも世界の野球がより身近に感じられるかも知れない。なにより、ルーツを同じくするものが、国境の壁を越えて集い、一致団結する。そこから何が生まれるのか。それは、WBCの存在意義にも通じる。
もちろん、戦力になることが前提。「(大リーガー)だからといって選ぶことはないし、日本のいまの候補の選手よりも勝ちに貢献してくれるんであれば」と栗山監督は話したが、ともに母親が日本人のラーズ・ヌートバー(カージナルス)とスティーブン・クワン(ガーディアンズ)であれば、その要件を満たしうる。ヌートバーは今年、108試合に出場。打率.228ながら、14本塁打、出塁率.340、OPS.788。外野は右翼が定位置だが、どこでも守れる。クワンは今年、打率.298、出塁率.373をマーク。新人王の投票では3位に入り、ゴールドグラブも獲得した。
もっともクワンは、母型の祖父母が山形県出身の日本人で、母親に関しても日本で出生したとの報道もあるが、米国で出生したとの記事もある。まさにいま、彼らの有資格を確認しているところのようだが、条件がクリアとなった場合、彼らの加入がどんな化学反応をもたらすのか、興味深い。
で、イエリッチは?
「本人と話しました」と栗山監督。
「代理人からも連絡がありました」
それは、「ぜひ、日本代表として出場したい」という打診だったよう。パンデミックを境にやや低迷しているが、2018年は打率.326、36本塁打、110打点、118得点、22盗塁、出塁率.402、OPS1.000でナ・リーグMVP。惜しくも三冠王を逃した。翌19年も打率.329、 44本塁打、97打点、100得点、30盗塁、出塁率.429、OPS1.100をマークし、MVP投票では2位だった。そんなイエリッチが加われば、どうなるのか。
特例を認めさせるには大義名分が必要だが、ドアを叩き続ければ、扉が開くかもしれない。
栗山監督は、「最後まで可能性を探り、最高のチームを作りたい」と力を込めた。
(文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)