世界が「あれ何？」「なぜ着せた？」…W杯優勝のメッシが表彰式で羽織った“黒いシースルーマント”を巡って賛否“論争”起きる

　FIFAワールドカップのカタール大会はアルゼンチン代表が決勝でフランス代表をPK戦の末に破り、36年ぶり3回目の優勝を果たして幕を閉じたが、意外な“場外論争”が勃発した。この試合で2得点をマークし大会MVPに輝いた主将のリオネル・メッシ（35、パリ・サンジェルマン）が、表彰式でカタールのタミル首長から伝統衣装「ビシュト」を贈られたため、それを着てW杯トロフィーを手にして記念写真に納まったことに対して賛否の声が海外メディアやSNS上で起きているもの。歓喜のメッシにすれば気になる問題ではないのかもしれないが…舞台裏で政治や金などが渦巻くW杯ならではの“論争”だ。

　カタールのタミル首長がメッシに着させた伝統衣装「ビシュト」

　それは過去のW杯にはなかった奇妙なシーンだった。
　歓喜の表彰式。アルゼンチンの主将で、決勝で価値ある2ゴールをマークして、大会7ゴールでMVPにも輝いたメッシが、栄誉あるW杯トロフィーを受け取る最大のクライマックスを前に、FIFAのインファンティーノ会長と共にプレゼンターとして壇上にいたカタールのタミル首長から黒いシースルーのマントを贈られ、首長が自ら着せたのだ。
「ビシュト」と呼ばれる中東、アラブの結婚式や特別な儀式で着用する伝統衣装で、政府の高官や聖職者が使用することから、王族の衣装としても知られるもの。
　メッシは「ビシュト」を着たまま、手をこすりながら、悲願のW杯トロフィーをインファンティーノ会長とタミル首長から手渡されると、キスをし、待ち受ける仲間の元に歩み寄り。真ん中に立ちカタールの空高く掲げた。
　ライブ中継したABEMAの解説を務めた元日本代表の本田圭佑氏も、このシーンに違和感を感じたのか、応援していたアルゼンチンの36年ぶりの優勝に関する感想を聞かれ「視点は違うんですが」と断った上で、こう続けた。
「着させてもらったやつ(ビシュト)を脱いだ方がいいんじゃないですか。カタール側の着て欲しい（の願いを聞いて）の役目は果たしたと思うのでアルゼンチンのユニホームを全面的に出した方がいいんじゃないですか。メッシは優しいから、それ（主催者カタール側の要望を受け入れること）をやったじゃないですか。もう脱いでいいんじゃないですか、だって一生(写真として）残るでしょう」
　実際、FIFAは、公式ツイッターに「ビシュト」を着たままW杯トロフィーを掲げるシーンの写真をアップした。
　海外メディアやSNS上では、さっそくこのメッシが着た黒いシースルーマントが論争の的となった。
　スペインのスポーツ紙「マルカ」は、「あれは何？なぜ彼らは、表彰式でビシュトを(メッシに)着せた？」との見出しを取り話題にした。
　同紙によるとカタール大会組織委員会のハッサン・アル・タワディ事務総長は、メッシの人生の「重要な瞬間を祝うために」贈呈したと説明したという。
「あれは私たちの公式の服です。私たちは、いつもそれを重要な場面に参加する際に着用して、私たちの人生の重要な瞬間を祝うのです」
　米「CNBC」も、「ビシュトは通常、高官や聖職者が着用し、王族や、富、儀式の瞬間と結びついている。これまでのW杯トロフィーの授与式で、伝統衣装を着た例はなく、そういう中東の伝統衣装をタミル首長から贈られたメッシにできること（拒否すること）がなかったことを考えると奇妙だった」と疑問視した。