なぜカシメロ対赤穂の”反則パンチ”による「無効試合」が「カシメロKO勝利」に変更されたのか…ネット上では賛否…JBCは当惑
カシメロも試合後に「すでに1ラウンドでダメージを与えていた。彼の後頭部を狙って打ったわけではない。テンプルにもアゴにも当てている。映像をよく見て下さい。何も嘘がないことがわかるはずだ。オレが勝ったと思っている」と無効試合の判定に不服を訴えた。
赤穂も試合の4日後に自身の公式ユーチューブで、「結果はノーコンテストとなったが、自分の負け。自分の方が圧倒的にダメージをもらっている。アゴ(の骨)にもひびが入っている。2ラウンドに、どのパンチかわからないが、めちゃくちゃ効かされたパンチがあって(記憶が)飛んでいる。KO負けと言われれば、それまでだった」と語り、ラビットパンチ以外のパンチでダメージを負ったことを素直に認めていた。
また試合再開への意欲を一切見せず、カシメロのあまりの強さに心が折れていたように見えた態度についても、「正直、そう見られると思う。どこかで心が折れたんだと思う。心が強くあったら、いちかばちか一発狙いで(試合を)再開していた。効かされて、どこか弱気になってカシメロにのみ込まれた部分がある」との本音を明かした。
カシメロにとってこの試合は復活をアピールするための重要な舞台だった。昨年8月にWBA世界バンタム級のレギュラー王者だったギレルモ・リゴンドー(キューバ)に判定勝利して以来、1年4か月ぶりのリング。昨年12月には当時保持していたWBO世界バンタム級王座の防衛戦をポール・バトラー(34、英)と行う予定だったが、計量をキャンセル、試合は中止になった。ウィルス性の胃腸炎だったという診断書をWBOに提出してタイトル剥奪は回避したが、迷走は続き、今年4月に再度セットされたバトラー戦では、英国ボクシング管理委員会が医療ガイドラインで禁止しているサウナを使っての減量を行っていたことが発覚して試合が認められず、その後、WBOタイトルを剥奪されるなど“問題児“としてレッテルを貼られていた。
赤穂戦は、スーパーバンタム級に上げて、対戦を熱望していたバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(29、大橋)が転級してくる階級で迎え撃つためのアピールをする試合でもあった。無効試合では評価もそうだが、世界ランキングのアップにつながらない。今回の裁定変更の背景には、カシメロ陣営からKBMへの強い働きかけがあったようだが、ネット上の批判の声に加え、赤穂のユーチューブでの発言及び、彼が一部からバッシングを受け続けている状況も、この試合が再検証されることに大きな影響を及ぼしたものと考えられている。
しかし現状では裁定変更に至った詳しい経緯は不明だ。
世界ランカーの日本人ボクサーがかかわった試合での裁定結果の変更は、ボクシング界の信頼、信用が揺らぎかねない重大な問題。実際、異例の裁定変更を受けてネット上では、すでに「変更は妥当」と評価する声がある一方で「世間の声で裁定が変わるのはおかしい」「わけがわからない」などの批判的な意見も飛び交っている。今後、JBCは、KBM並びにプロモーターに経緯の確認などを行う方向だというが、ファン、関係者を納得させて一件落着に持っていくにはプロモーターも含めて“説明”が必要だろう。
(文責・本郷陽一/ROSPO、スポーツタイムズ通信社)