なぜ元日本代表DF槙野智章は35歳での電撃引退を決断したのか…体力の限界とサッカー版の新庄監督を目指す思い
インターネットTVの『Abema』ではピッチレポーターとして、解説を務めた元日本代表MFの本田圭佑(36)との軽妙なやり取りが視聴者の間で大きな人気を呼んだ。槙野は同時にドーハ市内の日本代表の練習拠点へ時間が許す限り足を運び、森保一監督(54)や前回ロシア大会をともに戦ったキャプテン、DF吉田麻也(34、シャルケ)らの一挙手一投足を注視した。
開幕前の下馬評が芳しくなかった森保ジャパンは、W杯での優勝経験を持つドイツ、スペイン両代表をグループステージで撃破。目標として掲げ続けたベスト8進出こそ逃したものの、世界を驚かせる戦いを演じてグループEを1位で突破した。
ロシア大会のベスト16を代表選手として経験した槙野は、今大会で日本の快進撃をピッチの外から目の当たりにした。特にサンフレッチェ広島やU-20代表で、選手とコーチの関係だった森保監督の立ち居振る舞いに刺激を受けたと、生出演した番組のなかで明かしている。
「今大会で森保監督がああいう姿を見せてくださったなかで、日本人監督の素晴らしさであるとか(言葉の)伝え方で、僕ならではのやり方があるんじゃないかと思いました」
日付が25日に変わった直後に、神戸も公式ウェブサイト上で槙野の引退を発表。神戸のファン・サポーターへの感謝の思いが綴られたリリースのなかで「私、槙野智章の航海はここで終わりとさせて頂きます」と表明した槙野は、さらにこんな言葉も紡いでいる。
「次の旅の準備は出来てます!! サッカー界のお祭り男 槙野智章 第二章の開幕です」
明日26日には槙野本人が登壇する記者会見が開催される。神戸のYouTube公式チャンネルでもライブ配信される会見のタイトルは、次のように銘打たれている。
「現役引退および槙野劇場第二章 開幕宣言会見」
サッカー界でSNSを最も使いこなすインフルエンサーとして、槙野は真っ先に名前をあげられてきた。自らを「サッカー界のお祭り男」と呼ぶゆえんを、槙野はこう説明してきた。
「サッカーのテクニックなら、乾貴士選手や宇佐美貴史選手が発信した方が子どもたちを含めてダイレクトに伝わる。ビジネストークになれば、本田圭佑選手が発信した方が面白い。じゃあ槙野は何をすればいいのか。サッカー選手だけどちょっとバカなことをする。芸人さんではないので、面白いことにサッカーをプラスアルファすることで、いろいろな方々が喜んでくれる」
エンターテイナーとしての存在感を大切にしながら、槙野は広島を皮切りにブンデスリーガ1部のケルン、浦和、そして神戸で紡がれてきたアスリートとしての人生に自らピリオドを打った。残されたもうひとつの素顔である、地道な努力の積み重ねを絶対に怠らない真面目さをより前面に打ち出しながら、槙野は夢と希望を抱いてセカンドキャリアを歩んでいく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)