異例スタイルの引退会見を開いた元日本代表DF槙野智章が“第二章”に掲げる「槙野監督」はいつどんな形で実現するのか?
TV番組で今シーズン限りでの現役引退を電撃発表していた元日本代表DFの槙野智章(35、ヴィッセル神戸)が26日、本拠地ノエビアスタジアム神戸で「現役引退および槙野劇場第二章開幕宣言会見」に臨んだ。1時間あまりの会見で、槙野はサッカー人生の第二章で「これまでにない日本人の監督像を作っていきたい」と明言。ファン・サポーターの前であらためて掲げた「監督・槙野」はいつ、どのような形で誕生するのか。
「これまでにない日本人監督像を作っていきたい」
引退会見の冒頭で槙野は泣いた。いや、泣かされた。
サンフレッチェ広島と浦和レッズで長く共闘した盟友、DF森脇良太(36、愛媛FC)が寄せたビデオメッセージ。そのなかで「いろいろな人にコメントを送ってきたけど、こんなに寂しいコメントはない。気持ちの整理ができていない」と号泣した直後だった。
ただ、引退と同時にこれから歩んでいく第二の人生を表明する晴れ舞台に、いつまでも涙は似合わない。17年間におよんだ現役生活を支えたすべての人々へ、感謝の思いを伝えた槙野は表情を引き締めながら、それまで座っていたひな壇からおもむろに降りた。
身振り手振りで始めたのは、プロジェクターを駆使したプレゼンテーション。タイトルに「第二章開幕宣言会見」と銘打った理由を「普通の引退会見をしようとは思いませんでした。自分にしかできないやり方で、これで終わりじゃない、ここからが始まりだとみなさんに伝えたかった」と説明した槙野は、次のステージで監督を目指すとあらためて宣言した。
「僕はこれまで何度も『監督になりたい』と言ってきました。いろいろなタイプの監督のもとでプレーしてきましたが、僕のなかで理想とする監督は正直、いまはいません。これまでにない日本人の監督像を自分が作っていきたい。それは主役である選手たちを最高に輝かせられる監督になること。選手たちの能力を引き出せる監督になりたい」
セカンドキャリアへ向けた準備を、すでに数年前からスタートさせている。
Jクラブで監督を務めるには、日本サッカー協会が発行する公認指導者コーチライセンスのなかで最高位のS級を取得しなければいけない。しかもC級からB級、A級ジェネラルとライセンスを順次取得し、ようやくS級へ向けたスタートラインに立てる。
現時点で槙野はB級コーチライセンスを取得している。浦和時代から養成講習会をオンラインで受講し、練習の合間をぬって育成年代の実技指導にもあたってきた。
日本協会が定めるライセンス制度では、以前はB級から次のステップへ進むためには、取得後に1年以上の指導実績が求められた。しかし、日本協会は昨秋の段階で、日本代表で20試合以上の出場歴を持つ受講者を対象に指導実績の免除を決めている。30代や40代前半の才能ある若手指導者が、日本サッカー界をけん引してほしいという狙いが込められていた。
槙野の国際Aマッチ出場数は、ロシア大会のポーランド戦を含めて「38」を数える。制度改正のもとで、来年度のA級コーチジェネラル養成講習会を受講できる。