異例スタイルの引退会見を開いた元日本代表DF槙野智章が“第二章”に掲げる「槙野監督」はいつどんな形で実現するのか?
今年度を例にあげれば、A級コーチジェネラル養成講習会は前期、中期、後期に分けられた上で、すべて5泊6日で実施されている。現役生活との両立は物理的に不可能であり、槙野自身も「現役のうちにB級ライセンスまでは取得しておきたい」と語っていた。
A級ジェネラルを取得してから先は、さらに狭き門が待っている。
まずは日本協会が主催する、S級コーチ養成講習会の「トライアル」に参加する必要がある。トライアルは実技実践と面談で構成され、成績優秀者がようやくS級コーチ養成講習会を受講できる。定員は16人から20人で、今年度は上限となる20人が受講している。
今年度を振り返れば、カリキュラムは5度の国内集中講習と1度の指導実践試験を開催。さらに終了後のレポート提出が義務づけられた3週間のインターンシップも課される。
すべてが順調に進んだとしても、S級ライセンス取得までには少なくとも2年間を要する。Jクラブの監督として指揮を執れるのは早くて2025年シーズンとなるが、目標を具現化させるためには絶対に欠かせないプロセスだと槙野もとらえている。
「これまでたくさんの選手上がりの監督をみてきましたけど、経験値や勉強は必須と思っています。選手として当たり前にやっていたサッカーではなく、指導者として俯瞰したいサッカー、戦術、物ごとの進め方、チームビルディングなどを学んでいきたい」
さらにS級ライセンスを取得しても、すぐに監督になれるとは限らない。
2002年の日韓共催W杯を含めて日本代表で活躍し、2013シーズン限りで現役を引退。来シーズンからJ3のSC相模原で初めて監督業をスタートさせる戸田和幸氏(44)を例にあげれば、S級ライセンスを取得したのは2016年12月にまでさかのぼる。
引退後は徹底したリサーチと的確な戦術分析を介した解説で人気を博し、UEFAチャンピオンズリーグ決勝を含めて、国内外でさまざまな試合を担当。見識を広げながら、S級取得後は慶應義塾大学のコーチや一橋大学のコーチおよび監督、東京都社会人サッカーリーグ1部のSHIBUYA CITY FCでテクニカルダイレクター兼コーチとして指導実績を積んだ。
その上で相模原の監督に就任した経緯を、戸田氏は「運と縁」という言葉に集約させた。槙野の今後にも同じ言葉があてはまるだろう。S級取得までの軌跡や、S級を取得した時点での各クラブの状況を含めたすべてが複合的に絡み合ってオファーに発展する。