森保監督の続投は正解なのか…メリットとデメリットを検証した
カタール大会までの4年あまりで、森保監督は24歳以下の選手たちで構成された昨夏の東京五輪代表監督を兼任。1チーム2カテゴリーを合言葉に選考対象を広げ、最終的には26人の大会登録メンバーのうち19人がW杯初経験というチームを作り上げた。
しかし、反町技術委員長が指摘したように、センターフォワードに関しては強烈な個を放ちながらゴールに絡む存在を最後まで見つけられなかった。2024年のパリ五輪世代のU-21代表を率いる大岩剛監督(50)、ひとつ下のU-19代表の指揮を執る冨樫剛一監督(51)とのコミュニケーションを密にしながら、いかに世代交代のうねりを生み出せていけるか。
新型コロナ禍で東京五輪の開催が1年延期された影響もあるが、2つのカテゴリーの融合が本格化したのはカタール大会まで1年あまりになった段階だった。カタール大会までと同じようなスピードでチームを作っていては、選手間に競争意識は生まれない。
懸念される点、つまりデメリットはまだある。
カタール大会では、それまで時間を費やしてきたはずの4バックを断念。3バックにスイッチし、さらに左ウイングバックに三笘薫(25、ブライトン)、右に伊東純也(29、スタッド・ランス)とドリブラーを配置する布陣でドイツとスペインを撃破した。
本番用に隠してきた秘策なのか。大会期間中にこう問われた森保監督は、3バックの練習をほとんど積んでいない点を含めて、ぶっつけ本番だったと明かしている。
「これまで積み上げてきた戦術や選手個々の役割において、代表チームでやってきたことと彼らが所属チームでやってきたことを、上手く組み合わせながら試合で生かしていく、ということはこれまでもやってきた。彼らはよく理解してよさを出してくれたと思う」
土壇場で即席の布陣を決断した指揮官の胆力は評価に値する。チームを戦う集団にまとめあげた、人柄を含めた求心力も然り。しかし、ドイツとスペインから同点ゴールをあげたMF堂安律(24、フライブルク)は、大会中にこんな言葉も残していた。
「大会中に他の選手も口にしていたと思いますけど、ドイツやスペインを相手にした戦い方は、すべて僕たちがやりたかったことではなかった。勝つ可能性を上げるためだけにとった手段であって、理想としていたサッカーではないのは僕たち選手がわかっています」
個人としては不本意な出来に終わったMF鎌田大地(26、アイントラハト・フランクフルト)も、再現性が極めて低い勝利だったと受け止めていた。
「ドイツやスペインと対等だったのかと言われると、間違いなくほど遠かった。今大会はこのやり方で自分たちが目指していたところまでたどり着けそうでしたけど、その先にまで行こうと考えたときには、もっとポゼッションもできないとダメだと思っている」