3位オリックスが3球団ゲーム差ゼロの“混パ”演出…アクシデントを乗り越えて決死の8人完封リレーで2位の西武撃破
オリックスが執念の8人継投でアクシデントを乗り越え、西武に5-0で快勝した。敵地ベルーナドームに乗り込んだオリックスは、先発した椋木蓮(22)が右ひじの違和感を訴えて2回途中で降板。しかし、急きょ登板した育成出身の宇田川優希(23)が打者8人から5三振を奪う“完全救援”で流れを引き寄せ、5回以降も6人の投手が西武打線を零封した。首位のソフトバンクが楽天に敗れたことで、まだ順位は変わらないが、2位西武、3位オリックスまでが0ゲーム差でひしめき合う大混戦となった。
宇田川「自分がいいピッチングをして流れを持ってこようと投げた」
ベルーナドームが静寂に包まれた。2回一死から6番・栗山巧がショートへの内野安打で出塁した直後のシーン。頭上を越える打球をキャッチしようと、椋木が思い切りジャンプするも届かなかったマウンド上で異変が生じたからだ。
決してピンチには映らなかった場面だったが、高山郁夫ピッチングコーチとトレーナーがマウンドに向かってきた。オリックス内野陣も集まってくるなかで、一塁側ベンチでは齋藤俊雄バッテリーコーチがブルペンへ連絡を入れている。
そして、それまで誰も準備していなかった一塁側のブルペンで、宇田川が投球練習を始める。昨年のドラフト1位で東北福祉大から入団し、この夜の西武戦が4度目の先発だった椋木が、右ひじの違和感を訴えて続投が不可能となったのだ。
慌ただしくマウンドへ向かった宇田川は、2020年の育成ドラフト3位で仙台大から入団。今シーズンにおける二軍での好成績が評価されて7月末に支配下登録され、背番号を育成時代の「013」から「96」に変更したばかりだった。
これまで10度の一軍登板は、最も早いイニングで7回。大差でリードしているか、あるいは負けている場面がほとんどで、唯一、同点の場面で登板した8月13日のソフトバンク戦では周東佑京にサヨナラ本塁打を浴びて負け投手になっていた。
初めて経験する、プレーボールから1時間もたたない時間帯での登板。しかし、身長184cm体重92kgのサイズを誇る本格派右腕は腹をくくり、覚悟と決意を胸中に秘めて、約1ヵ月前に一軍デビューを果たした敵地のマウンドに立った。
「昨日、一昨日とチームが負けていたので、自分がいいピッチングをして流れを持ってこようと思って投げました」
迷いはなかった。2回は7番・中村剛也を直球攻めでセンターフライに、8番・オグレディを外角低めに落ちる140kmのフォークで空振り三振に斬った。続く3回も三振ひとつを含む三者凡退に仕留めて迎えた4回。圧巻の投球が繰り広げられた。
3番・森友哉を141kmのフォークで、4番・山川穂高をこの試合で最速となる154kmの直球で、そして5番・呉念庭を143kmのフォークで立て続けに空振り三振に仕留めた。6日のロッテ戦で3連発を放っている最強クリーンナップを圧倒した宇田川は、一軍最長となる2回3分の2を31球、5奪三振を含めたパーフェクトに封じ込んだ。
4回に先頭の3番・中川圭太の5号ソロで先制したオリックスは、宇田川の快投を介してさらに流れを引き寄せる。5回をK‐鈴木から吉田凌への継投で、6回以降は小木田敦也、阿部翔太、ワゲスパック、そして平野佳寿と1イニングずつ、終わってみれば8人全員が右腕というリレーで西武打線を散発6安打で零封した。