3位オリックスが3球団ゲーム差ゼロの“混パ”演出…アクシデントを乗り越えて決死の8人完封リレーで2位の西武撃破
打線も終盤に爆発する。7回に宗佑磨のタイムリーで1点を、8回に途中出場の伏見寅威と中川の自身初の1試合2発となるソロの共演で2点を、最終回にもT‐岡田のタイムリー二塁打で1点を追加。連敗を「2」で止めた一戦のヒーローに選ばれ、これも初体験になるお立ち台に立ったのは、嬉しいプロ初勝利をあげた宇田川だった。
平野から手渡されたウイニングボールを「親にあげます」と打ち明けた宇田川は、緊迫した場面でパーフェクトに抑えた自身の投球をはにかみながら振り返っている。
「(最初は)フォークがちょっと浮いてしまったんですけど、低目に投げられるように修正できたのがよかった。課題のコントロールは去年まで全然ダメだったんですけど、今年からストライクゾーンで勝負できて、自分的にはいいかなと思っています」
昨シーズンの王者オリックスにとっては、負けが絶対に許されない一戦だった。前夜まで敵地・札幌ドームで最下位の日本ハムに連敗。舞台をベルーナドームに移した西武との今シーズン最終戦も落とせば、そのままズルズルと後退しかねない。 しかも、先発のマウンドを託した椋木がアクシデントで緊急降板を余儀なくされた。文字通りの窮地で宇田川が快投を演じ、それまで無安打に封じられ、3回には三者三振に斬られていた西武の先発・平井克典から中川の一発で先制点を奪った。
一度つかんだ流れを西武にわたしてなるものか、という執念にも似た思いが8人によるリレーにつながった。報道によれば、オリックスの中嶋聡監督は「本当によく攻めてくれた。ナイスピッチング」と宇田川を称えた上で、今後へ向けてこう語ったという。
「西武との試合も終わりましたし、どこというよりも、本当に全部の試合になると思う」
指揮官が言及した「本当に全部の試合」とはオリックスにとっての残り15試合へ、一戦必勝のトーナメント態勢で臨む覚悟と決意を表している。
首位ソフトバンクが楽天に敗れたため、順位に変動はないものの、3位のオリックスまでがゲーム差なしでひしめき合う未曽有の大混戦状態が生まれた。正確にはソフトバンクを勝率9毛差で西武が、さらに西武を5毛差でオリックスが追う。
相手がどこであれ、ここから先はひとつの黒星が後退につながっていく。さらに2.5ゲーム差の4位で踏ん張る楽天にも抜かれかねない。リーグ優勝だけでなく、クライマックスシリーズ進出をかけた戦いもいよいよ熾烈さを増してくる。
一夜明けた9日の移動日をへて、オリックスは10日から京セラドーム大阪でソフトバンク2連戦が、移動日なしで12日からは楽天生命パークで楽天との2連戦が待つ。
「これからいいところで自分のピッチングができるように頑張ります」
歓喜のプロ初勝利を自信に変えていきたいと前を見すえた宇田川へ、オリックスファンから惜しみない拍手が降り注いだ。シーズン終盤でまばゆい輝きを放った新星が、パ・リーグ連覇を狙うオリックスのキーマンの一人になるかもしれない。
(文責・藤江直人/スポーツライター)