4回戦ボーイ倒せず1000万円ゲット皇治と「負ける気しなかった」ヒロキング。勝敗がつかなかった異色エキシの本当の勝者は?
さて今回のイベントの勝者はいったい誰なのだろう。
2度の記者会見出席のパフォーマンスと9分間の戦いで大金を得た皇治なのか。それとも、注目を集めたヒロキングか。いや本当の勝者は、JBCとひと悶着はあったが、皇治を引っ張りだすことで、興行に話題を集め、まだ実力のないジム所属の4回戦ボーイにスポットライトを当てることに成功した大会プロモーターの亀田氏だろう。
初の自主興行となった今回、スポンサーを32社集め、チケットの最前列に10万円の値をつけたチケッティングでも、5000人の集客に成功。1億円規模の大イベントを亀田氏は、「今は未来への先行投資の時期。ただマイナスが大きいと次へ進まない。今は赤字だが、ペイできないと経営として成り立たない。計画として大丈夫」と説明した。
皇治vsヒロキング戦に先立って行われたボクシング興行の「3150FIGHTvol.3」では、ベストバウト賞として30万円を授与した福永宇宙(黒潮)対山下賢哉(JB)のノンタイトル戦での名勝負があり、2つのタイトル戦においてOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチでは王者の力石政法(緑)、日本ヘビー級王座決定戦では但馬ミツロ(KWORLD3)がそれぞれTKO勝利した。 一方で、元世界王者の宮崎亮(同)が1ラウンドでパナマ人の世界ランカーにTKO負けし、世界挑戦経験もある大沢宏普(オール)もフィリピン人に倒されるなど、招聘した外国人ボクサーの強さが目立った大会でもあったが、それがリアルなボクシングである。
亀田氏が掲げる「日本中のジムや選手が潤うようにボクシングをメジャーにしたい」のビジョンに、今大会がどう寄与したかわからないし、ヨイショするつもりもないが、WBC世界ライトフライ級王者、寺地拳四朗(BMB)に続く世界王者が不在で閉塞感のある関西ボクシング界に一石を投じたことは間違いない。
最後に。
JBCルールで現役ボクサーの非ボクシングへの参加を禁じているJBCは、昨年12月に同様のイベントを認めたという過去の経緯から今回のイベントは容認したが、亀田側に「自主的な変更の検討を求める」要望書を送付した。皇治の相手をヒロキングからJBCライセンスを持たない他の選手へ変更することと、2つのイベントの差別化を明確にして間隔を当初、企画書に書かれていた20分から1時間以上に増やして観客を入れ替えることを求めた。通知は今月6日付で時間的な余裕がなかったためヒロキングの交代ができなかったことは理解できるが、この日、両イベントの間隔は約20分のままで、別チケットを用意していたとはいえ筆者が見る限り、入れ替えは、ほとんど行われずスペシャルマッチ用のチケットで再入場している観客もごくわずかだった。間隔を空けすぎると、ABEMAの番組進行に問題があったのかもしれないが、そもそもJBC管轄外の「ABEMAスペシャルマッチ」と銘打ってるのであれば、ボクシングから番組を続けて進行しているABEMA側の番組編成に問題があるだろう。JBCが不手際を重ねたとはいえ、亀田側も当初の予定の20分をせめて10分でも伸ばす自主的努力はすべきだったと思う。信頼関係の構築は、そういう小さな努力から始まるのだ。
(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)