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日ハム吉田輝星が思い出の甲子園で初先発したが、大山の3ランを含む3回4失点のホロ苦KOとなった(資料写真・黒田史夫)
日ハム吉田輝星が思い出の甲子園で初先発したが、大山の3ランを含む3回4失点のホロ苦KOとなった(資料写真・黒田史夫)

BIGBOSS采配裏目?!阪神に3回4失点KOされた吉田輝星の”思い出の甲子園”先発は正しかったのか?

 

BIGBOSS新庄が仕掛けた吉田輝星(21)の甲子園凱旋登板は不発に終わった。日ハムは5日の阪神戦に金足農業高校時代、甲子園で”カナノウ旋風”を巻き起こした4年目の吉田を“聖地“で初先発させたが、大山悠輔の3ランを含む7安打4失点で3回KOとなり、チームも3-8で敗れた。今季は中継ぎで存在感を示してきた吉田だが、先発調整期間も十分になく、高校時代に慣れているはずの大観衆の雰囲気にのまれて結果を出すことができなかった。日ハムは阪神に3タテを食らい4連敗。BIGBOSS采配は裏目に出た。

超異例の甲子園インスタライブ

 入団4年目にして実現した“プロ・コウセイ”の甲子園デビューはBIGBOSS異例のインスタライブから始まった。

「いいのかな。ビジターでインスタライブして(笑)」

 ビジター用の監督室から始まったインスタライブで新庄監督は、吉田の先発起用理由をこう説明した。

「オレは海外に住んでいたから吉田投手の活躍は見ていなかったけど、噂によると、むちゃくちゃ凄かったらしいね。みんなを感動させた甲子園のマウンド。“よし!日曜の超満員のマウンドを任せたい!”と、ピッチングコーチらにアイデアを出したら『おもしろいと思いますよ』『いきましょう』ということで決まりました」

 そしてグラウンドでランニング中だった吉田の心境を「今ごろ、キンチョウ(緊張)・ツヨシ(強し)になっていると思う。ガクガクなのか、燃えまくって気合が入っているのか、どっちかだよね」と推察した。

 吉田だけでなくスタメンも全員甲子園出場組で揃えたいという意向があったそうだが、「2敗しているので今日はなんとか勝ちにこだわって。いつもこだわってんだけど(笑)」と、もちろん甲子園出場経験のないアルカンタラをスタメンに加えた。

 吉田へは「5回以降に雨が降りそうなんで、5回までになんとか仕掛けて、万が一中止になったときに勝っているゲームをしたい。そのためにも吉田君が、ゼロ、もしくは1点くらいで抑えてくれたら、おもしろいゲームができるんじゃないかと思う次第でございます」との期待を寄せた。

 だが、BIGBOSSの描いたシナリオ通りに事は運ばなかった。

 マウンドに上がった吉田は、予告していた侍ポーズはとらなかった。金足農高時代の甲子園とは、違った顔を見せた聖地が”待った”をかけたのかもしれない。

 いきなり1回に迎えた一死一、二塁のピンチ。4番の佐藤を144キロのストレートで三塁ゴロに抑え、続く絶好調の大山は、カウント2-2からフォークを連投して空振りの三振に斬って取った。

 気合のこもったガッツポーズが飛び出したが、大山に対しての配球は、ほぼ外角一辺倒。4球目に1球だけインサイドを143キロのストレートで攻めたが、スムーズにバットを出した大山にレフトポールの左に大ファウルを打たれた。次の打席への布石となる厳しい内角球を使えていなかったのである。  2回に立ち直ったかのように見えた吉田だったが3回につかまる。二死一、二塁から佐藤を警戒するあまりフォークを3連投。虎の主砲が苦手とする内角球も、高めのストレートも1球も使わなかった。若きバッテリーの慎重さが配球ミスを呼ぶ。カウント2-1から甘く入ったストレートをライト前へ痛打され先に点を失う。 

 そして2日前に1試合3本塁打を放っている大山である。カウント1-1から内角に投じたストレートをレフトスタンドへ運ばれた。1打席目のファウルよりもボールひとつ甘く入った内角球。その分ファウルではなく3ランとなった。  スポーツ各紙の報道によると、試合後、吉田は「完璧に(インコースを)狙われていた」と悔やんだそうだが、最終的にフォーク勝負のプランだったのであれば、内角球は、ボールゾーンに投じなければ危険であることを1打席目のファウルから察知しておかねばらなかった。

 吉田は、大旋風を巻き起こした金足農高時代には、味方についてくれた母なる甲子園の大観衆が、今度は敵に回り、まったく違った雰囲気にのまれてしまったという。思い出の甲子園で痛恨の3回55球KO。今季初黒星で3点台だった防御率は4.20となった。

 今季の初登板は3月27日のソフトバンク戦の先発だったが、その後、中継ぎに配置転換されて、9試合連続で無失点を続けるなど存在感を示していた。リリースポイントを上にした新フォームでボールに角度がつき、ストレートとフォークのコンビネーションで1イニングでは威力を発揮していた。だが、登板数は、この日までに20試合。5月25日のヤクルト戦では3失点するなど、疲れが見え始めていた。

 1イニング全力であれば通用するストレートも、先発する中では、マックス147キロは表示していたが、打者の手元で伸びてくる持ち味は、すっかりと影を潜め阪神打線に確実に捉えられていた。

 フォークも抜けが目だち安定感に欠いていた。

 ストレートとフォークの2種類のコンビネーションは、中継ぎでは十分だが、先発をするには球種がひとつ足りない。スライダーはあるが、勝負球、カウント球のいずれでも使えるようなレベルには達していない。まだ先発投手の要件を満たしていないとも言える。

 加えて今回の先発への準備期間は、5月29日の巨人戦で1イニング投げた後からのたった1週間しかなかった。

 BIGBOSSは、甲子園の魔力で吉田の隠れたポテンシャルがさらに引き出し、中継ぎ感覚で、1イニング、1イニングいけるところまでいけばいいと考えていたのだろうが、それが通用するほど甘くはなかった。

 

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