”TKO負け”で病院送り朝倉未来はメイウェザーを本気にさせることができたのか…「異次元」「なぜ本気になる必要があるの?」
総合格闘技イベントの「超RIZIN」が25日、さいたまスーパーアリーナで行われ、プロボクシングの50戦無敗で元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー・ジュニア(45、米国)とスタンディングバウトのエキシビションマッチを戦った総合格闘家で人気ユーチューバーの朝倉未来(30、トライフォース赤坂)が、2ラウンド3分15秒TKO“負け“を喫した(公式には勝敗つかず)。ボクシング初挑戦の朝倉は、当初、触れることさえできないと予想されていたが、左のボデイ、右ストレートなどのパンチを当てて会場を沸かせた。朝倉はレジェンドを本気にさせたのか?
「地面がゆがんで見えた」
サングラス姿でインタビュールームに現れた朝倉は「悔しい。頭が痛いっす」と第一声。言葉に力がない。
「反応速度もすべてが異次元だった」
その表現にこの試合のすべてが集約されている。
完敗だった。
試合前「メイウェザーにクセがある」と豪語していた朝倉だったが、総合格闘家のクセを見抜かれていたのは朝倉の方だった。
「経験から対戦相手と向きあっただけでデータを集めることができる」
2ラウンドの終了間際。朝倉が右のパンチを繰り出そうとした刹那、メイウェザーの右のストレートが戦慄のクロスカウンターとなって朝倉の右耳の下あたりを直撃した。
総合のクセが抜けない朝倉は、後ろ重心でパンチを放ち、しかも、タックルへいくクセが抜けきらないのか、左斜め前へ頭と上体が流れた。サウスポー対策の常道である相手の足の外にポジションを置くという基本を守ったメイウェザーは、朝倉のクセを6分間の戦いで察知した上、その死角からカウンターを狙いすましていた。おそらく朝倉にとって見えないパンチだったのだろう。
朝倉は背中からキャンバスに転げ落ち、一度、立ちあがろうとしたが、体が傾くほど、よろけて両ヒザをついた。両目の焦点は宙を舞っていた。
「地面がゆがんで見えた。立とうとしたが立てなかった」
朝倉は懸命に意識を取り戻そうとしたが、村田諒太や井上尚弥の世界戦を裁いたこともあるケニー・ベイレス氏は、両手を交差してTKOを宣告した。
試合後、朝倉は検査のため病院へ直行した。
「記憶がない」
研究熱心な朝倉は、すぐに控室で映像を見返したそうだが、完璧なクリーンヒットを浴びたわけでもなく「なんであれで倒れたのかは謎。めちゃくちゃ頭が痛い」と首をかしげた。
その謎を解いたのはメイウェザーである。
「終わらせたパンチは強くは当てていない。決めにいった認識ではないが、その前に当てたいくつかの打撃が積み重なったダメージで倒れた」
フィニッシュに行く前にノーガードディフェンスでプレッシャーをかけていたメイウェザーは、右フックと頭を下げて突き上げるノーモーションの右ストレートを急所に叩き込んでいた。10オンスのグローブで殴られる感覚は「ボワーン」で脳へのダメージが徐々に蓄積される。総合格闘技用の薄いオープンフィンガーグローブのように「ガツン」とダイレクトに脳へ響いてこない。ボクシング経験のない朝倉にしてみれば、初めて味わう10オンスグローブのダメージ。耐久性もなかったのだろう。