”TKO負け”で病院送り朝倉未来はメイウェザーを本気にさせることができたのか…「異次元」「なぜ本気になる必要があるの?」
メイウェザーは、公開練習と前日会見で「自分が終わらせたいと思ったときに終わらせる」と豪語していた。 「日本にいる親しい友人から、“1ラウンドは引っ張って2ラウンドに決めてくれ”というリクエストがあってね。それに応えようかなと思ったんだ」という。
朝倉は見せ場は作った。
1ラウンドは右のジャブからオーソドックスなスタイルで入った。フェイントを交えながらプレスをかけ左のボディブローがカウンターとなってメイウエザーの脇腹にめりこんだ。臆することなくよく手が出た。大振りのフックが空振りになっても気にしない。ロープに詰めガードを固めた上からフックを連打した。メイウェザーがパンチを返すと朝倉は両手を広げて“そんなパンチ効いていない”のポーズ。 「気持ちはのってきた感じ。全然戦えると思った」
手応えはあったのだろう。1ラウンド終了間際の右ストレートを頭の位置をずらして外すと、ニヤっと笑い、舌を出した。
だが、メイウェザーは、「映像も見たことがないし名前も知らなかった」という総合格闘家の力量を測っていた。
「プレッシャーをかけて反応を見た。朝倉は大きな力強いパンチを返してきた。どんなファイターでも1ラウンドはとても強い。最初は軽い打撃で様子を見たが、強いパンチを返してきた」
実は、ジャブで対抗しながら、距離、ガード、ステップバック、スウェー…あらゆるディフェンスを駆使しながら様子を見ていたメイウエザーは、2発だけボディにパンチを返している。これは強打してきた朝倉に「そっちがそういうメッセージを返してくるなら、こっちも打てるとメッセージを与えたんだ」という。 朝倉が出した舌もメイウェザーにスイッチを入れるきっかけとなった。
「遊ぶつもりか。それがいつまで続くか。じゃあ、こっちもやってみるか、とやった。2ラウンドから呼吸が乱れてきたのもわかった」
「TBE(史上最高)」を名乗る天賦の才能が動き始めていたのである。
2ラウンドに入るとメイウェザーが右を当てながらジワジワとプレスをかける。それでも朝倉は、クリンチでつかまえて左を3連打。右ストレートから左フックを返し、下がったことでガードが甘くなったメイウェザーの顔面に伸びあがって打つ右のストレートが若干浅いがクリーンヒットしたのだ。
この一発がメイウェザーを本気にさせたのか? メイウェザーは「本気?なんでそうなる必要があるんだ?」と明確に否定した。
「あの程度のパンチを一発もらったところで気にすることない」
打ち合いになってもメイウェザーは笑っていた。
「彼は一発を食らっても戦いにきた。覚悟があった。タフだったよ」
本気になるというよりも朝倉の勇気に敬意を表していたのである。
メイウェザーは、当初2週間前に来日予定だったが、1週間前となったために時差調整がうまくいかず、睡眠時間は3時間で、この日も起床できたのが、試合開始3時間前。
「言い訳にはしたくないが、体の動きが悪かった」という。
会場入りが遅れ、準備に手間もかかり、試合開始予定が17、18分ずれこみ、朝倉や会場のファンを待たせた。