「（開幕戦悪夢が）そりゃよぎるやろ」…開幕白星発進の岡田阪神と連敗地獄だった昨年の矢野阪神の何がどう違ったのか？

　2回、大山、佐藤の連打で無死二、三塁にするとルーキーの森下がアウトコースの変化球を引っかけた。ただフルスイングしているから打球は大きく弾んだ。三塁走者の大山は“ゴロゴー”をせずにベースに戻ったが、その動きが、ベイのルーキーの目に入ったのか。突っ込んできた林がグラブに当ててボールがこぼれた。無死満塁。梅野は、追い込まれたが「なんとか食らいつこうという一心で」、石田の変化球の失投を見逃さなかった。
　レフト前へ先制タイムリー。小幡もセンター前へのタイムリーで続く。なおも無死満塁で青柳はバットを振らなかった。おそらく「振らずに三振」の細かいサインがベンチから出ていたのだろう。1番に返って近本がレフトへ犠牲フライ。昨季0勝3敗、防御率1.11の天敵の左腕のボールが浮いていたとはいえ、しっかりと攻略して貴重な3点を奪ったのである。
　1点をもぎとるベンチの野球があった。
　4回一死一、三塁から青柳の初球にセーフティースクイズ。青柳は、構えるそぶりも見せず、横浜DeNAバッテリーの警戒心がない中、高めのボール球をうまく転がした。
「ヒットの数の割には効率的によく点取れた。そういう意味ではよかったんとちゃうかな。(得点の)いろんなバリエーションもね。流れ的には、すごいいい流れで追加点も重ねられた」と岡田監督。
　この点も昨年とは大きく違う。　
　また隙をつく野球があった。8回、先頭の佐藤はライト前ヒット。だがオーバーランしたあと、楠本の打球処理の動きが緩慢で、山なりのボールを返球したのを認めると、迷わず二塁を陥れた。続く代打糸原は引っ張って進塁打にしたが、ベースヒットのままなら併殺でチャンスは途絶えていた。二死になってから岡田監督を「今まで3年分くらいヒット打ったんちゃうか」と驚かせる小幡のこの日3本目のヒットが貴重なタイムリーとなった。京田の左を襲う強烈な打球は、梅野のライナーをファンプレーをしていた元中日のショートストップのグラブを弾き飛ばしたのである。
「木浪がおるからよ」
　開幕スタメンは小幡がゲットしたが、オープン戦では木浪との激しいポジション争いがあった。岡田監督は木浪の存在が打たせたという。
　
　岡田監督の持論は「流れを手放すな」「いい選手から使う」――である。昨年は好投していた先発の藤浪晋太郎を7回で降ろし、この時点で5点差があったため、勝利方程式は使わず、現日ハムの斎藤友哉をマウンドに送り失点すると、慌てて岩崎を注ぎ込んだが、1点差に詰め寄られ、後手を踏んだ。まだ仕上がっておらず落ちるボールも習得していなかったケラーをほぼぶっつけ本番で登板させたが、逆転負け。ベンチの気の緩みが招いた敗戦だった。結局、この負けを引きずり、まさかの開幕9連敗。早々にV争いから脱落した。
　だが、岡田監督の継投は万全を期した。
　青柳は4回までパーフェクト。岡田監督「7回までいけるか」と踏んでいたが、6回に下位打線から始まる打順で四球絡みから二死一、二塁になると93球で継投を決断。横浜DeNAが青柳対策で、先発させていた左打者の神里に代えて、宮崎を送ってきたのは、「読み間違えだった」そうで、1点は失うが、牧をスイングアウトに斬り7回の浜地につないだ。
　岡田監督は、走者を置いたイニング途中の継投には、経験のある岩崎を投入する考えでいた。結果的にケラーが誤算ではあったが、現状のブルペンの順列でベストを尽くした継投である。