なぜ那須川天心はデビュー戦でKO決着できなかったのか…敗者の日本2位は「キレで倒すパンチ。今後はKOしていくんじゃないか」
「キレで倒す感じで、タイミングでもらうと危ないと思った場面もあった。結構、今後はKOをしていくんじゃないですか。ステップインして打ってきたパンチはガードごしで大丈夫だったが、タイミングよく下がっているときに打たれていたなら倒れると思う。『やばっ』と思うパンチが3回に何個かあった。ガクガク(と利かされるの)はなかったが」
拳を交えた男が感じた体感がすべてを物語っているのだろう。
ボクシング転向からわずか半年の天心に今すべてを求めることには無理がある。逆に言えば、その課題こそ、天心のノビシロなのだ。
本田会長は「6か月の練習のすべてを出したんだから100点。今のボクシングで12ラウンドできるなら完成ですよ。まだ半年。問題は体力。ここから4、5か月後はまったく違う天心になりますよ」と合格点を与えた。まったくダメージもなく綺麗な顔をしていた天心は「まだまだ伸びる。自分で可能性を感じている、早くボクシングをしたい」と次戦に気持ちが向く。
日本ランカーに勝利したことで日本ランキング入りはするが、JBCルールでは、6回戦で2勝しなければ8回戦に進めず、特例はあるが、まだタイトル戦には進めない。
「まず強くなること。日本ランカーを相手に内容では、ほぼパンチをもらわず、ダウンを取って勝つことができたので、ボクシング好きな人も『那須川天心、なかなかやるじゃん』と思ってもらえたと思う。これからも周りに期待されるカードをちゃんとやっていきたい。デビュー戦で外国人とやるのかなと思ったと思うが、僕の覚悟、意志で日本人選手とやらせてもらった。今後も、もっと強い選手とやって、チャンピオン、形としてベルトを狙いたい。そうすればみんなに認めてもらえる。強い奴とやっていかないと意味がない。強い奴とやって勝っていくのが格闘技」
それが天心の信念。陣営では、5月に走り込みキャンプを組み、その後、3度目の米国合宿を行い、次戦に備えたい方向で、本田会長も「1年後には日本のトップに立っている」と明言した。与那覇も「吸収力が凄い。どんどん上へいくと思いますね」と称えた。階級は当面はスーパーバンタム級で戦い、数年後に世界を狙う際にバンタム級に転級させるという。
会場には、若い男女が目立ち、明らかに普段のボクシング会場とは客層が違っていた。可愛い子供の声や、女性の「てんしーん」という声が響き、野太いオヤジの声はなかった。ライブ配信したアマゾンプライムビデオも天心の起用に新しい視聴者層の開拓への期待があったというが、天心がボクシング界に新たなる風を吹かせ始めたことは間違いない。
(文責・本郷陽一/ROSNPO、スポーツタイムズ通信社)