なぜ井岡一翔は世界ベルトを統一できなかったのか…ドローに割れた判定基準とWBA王者のタフネスという2つの誤算
リングサイドには、2018年大晦日に電撃引退した井岡が復帰する理由のひとつになった「最も戦いたい男」WBC世界同級王者のファン・フランシスコ・エストラーダが座っていた。試合後に2人は控室で会い、「フライ級時代から君と戦いたかった」と対戦を指名され、井岡も「僕もあなたと戦いたい」と答え「次はリングで会おう」と約束した。
試合後、エストラーダは「オファーのあった方と戦うが、個人的には井岡と戦いたい」と、井岡へラブコールを送った。実は、同行したマネージャーと下交渉のようなものも行われ、「場所は日本でも米国でもメキシコでもどこでもいい。すべて条件次第(ファイトマネー)」と、具体的な提案があったという。
井岡は「フランコと再戦して決着をつけたいという気持ちもあるが、どっちと戦いたいか?と聞かれれば、エストラーダ」という思いを吐露した。
3団体統一計画は、白紙に戻ったが、エストラーダ戦が消滅したわけでない。
ただ、その前にクリアしなければならないのが、WBOが180日以内の対戦を指令した同級1位の“ネクストモンスター候補“”中谷との指名試合だ。
「中谷であろうが誰であろうが王者の義務」と語っていた井岡に、この日、改めて王者の責任としての対戦の意思を確認すると「そうです」と肯定した。
その中谷は、プレスルームでの取材に応じて、「やるからには勝つという気持ちで仕上げていく。井岡さんは、安定してるボクサー。フランコが手を出し続けたような集中力がいる試合になる。いいイメージはできた。僕はサウスポーなんでね。距離…井岡さんが結構下がっていたので合わせるタイミングのイメージができた」と、早くもライバル心をむき出しにしている。
「次につながったという言葉が正しいか、正しくないかはわからない。ボクシング人生としての選択肢の中で戦うだけ。どんな試合がきてもチャンピオンとして戦う」
ベルト統一の悲願はお預けとなったが、2023年に井岡の夢への挑戦は続く。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)