1m98あるFW&DFの“異色二刀流”森重陽介はサッカー界の大谷翔平になれるのか…先制ゴール決めるもPK戦の末に敗退
センターバックに回った森重は、福田と何度も対峙した。
同点とされた場面は、福田の“したたかさ”が上回った。左サイドから上げられたクロスに対してキャプテンのGK岡本亜鶴(3年)が飛び出し、森重はがら空きとなったゴールのカバーに回った。この瞬間、福田の脳裏にひらめくものがあった。
「少しでもキーパーがじゃまだな、と思う状況を意識しました。無理すればクロスに触れたと思いますけど、ファウルにならない程度でちょっとじゃましました」
トップスピードで突っ込んでくる福田の姿が視界に入ったのか。岡本のパンチングが中途半端に短くなったところを折り返され、ゴール中央にいたDF大川翔(3年)に押し込まれた。森重が必死に伸ばした左足がシュートに触れるも弾き返せなかった。
ただ、福田とのマッチアップではほとんど仕事をさせなかった。
「やっぱりスーパーな選手で、同じフォワードとして学び、吸収する部分もあった。センターバックの考えで言うと、福田師王に点を取らせなかった、マッチアップしても自分の前で何もやらせなかったのは今後につながる。そこは自信を持っていきたい」
センターフォワードとセンターバックとでは、基本的な動きや使う筋肉もまったく異なる。しかも森重は前者の場合、本格的な挑戦を初めてまだ2年目だ。相手とのさまざまな駆け引きや体の使い方など、プロの世界で覚えることは山ほどある。
それでも大谷のプロ入り後がそうであったように、前例がないからといって挑戦にふたを閉ざしてしまったら何も始まらない。試合後に森重へ「プロの世界で、また勝負しよう」とエールを送った福田は、肌で感じた稀有な才能へこんな言葉を残した。
「本当に強いし、高い。両方できるのは素晴らしいと思います」
アマチュアでの戦いは終わった。大いなる可能性の片鱗を披露し、サッカーファンに夢を与えた森重は「これからも努力を続けて、センターフォワードとしてもセンターバックとしてももっともっと強くなりたい」と言い残し、胸を張って次のステージへ歩み始めた。
(文責・藤江直人/スポーツライター)