駒大“3冠”の裏に見えた箱根駅伝“第3の敵”との戦い…故障対策や選手層が厚くなければ勝てない時代へ
2強と呼ばれた駒大と青学大に割って入った中大はベストメンバーともいえる10人で出走。レギュラー候補の離脱者がいなかったからこそ、2位に食い込むことができたのだ。藤原正和駅伝監督は面白いことを言っていた。
「故障者を出さなかったのは、こちらのマネジメントと選手たちのケアの賜物だと思いますけど、感染症に関しては運ですよ。どこでもらうか分からないですから。たまたまウチに出なかっただけです。ただ、感染症の情勢なので、戦える人数を常時20人は用意しなきゃいけません。最終的には選手層の厚いチームが強いんじゃないでしょうか」
前回4位の東洋大もエース松山和希(3年)が故障のため、登録メンバー漏れ。出場予定だった九嶋恵舜(3年)と熊崎貴哉(3年)も戦線離脱した。また出走したメンバーに万全でない選手がいたため、今回は苦しいレースになった。
酒井俊幸監督は、「なんとか連続シードは確保することができたんですけど、非常にコンディショニングに苦労したんです。特に12月に入ってから、コロナ、インフルエンザ、それから疲労骨折者も出て、チグハグしたオーダーになってしまった」と振り返った。
箱根駅伝は決してレギュラー候補10人だけで戦えるレースではない。以前からインフルエンザやノロウイルスなどで直前の離脱者はいたが、ここに新型コロナウイルスの脅威が加わった。それからシューズの影響も大きい。
カーボンプレート入りの厚底シューズが全盛を迎えているが、反発力の高いシューズを履くことで故障者が続出しているのだ。
厚底シューズは接地が非常に柔らかいため、着地時にかかるダメージは薄底と比べて、かなり小さくなった。一方で、強い反発力に脚が耐えきれず、股関節周りや仙腸関節周りのケガが増加。最近はトレーニングで厚底シューズの使用を制限するチームが増えている。
箱根駅伝は以前よりも直前の離脱者が出やすい状況になっているのだ。新型コロナ禍での開催となった2021年大会以降は当日変更が4人から6人に拡大されたが、選手層の薄いチームは主力ひとりの欠場が大きな戦力ダウンになってしまう実情は変わらない。
内なる〝第3の敵〟に勝って、いかにベストの10人で本番に臨むのか。もしくは、数人の主力が離脱しても、揺るがないだけの選手層を作りあげるのか。今回は留学生も過去最多7人が出走した。“第3の敵”への対策が勝敗を左右する。年々根駅伝の戦いは難しくなっているような気がしている。
(文責・酒井政人/スポーツライター)