2023年のプロボクシング界に井上尚弥に迫る“ネクストモンスター”は出現するのか…那須川天心がいよいよ今春デビュー予定

　大晦日の井岡の世界戦のセミファイナルでは注目のホープがプロ2戦目のリングに。アマ13冠。アマチュアボクシング界の最高傑作と言われた堤だ。相手は武居が5回TKOで倒した前OPBF東洋太平洋王者のアポリナル。内容と結果を武居と比較されるマッチメークだった。デビュー戦に続き、骨のある相手をぶつけられたが、米国合宿でイスマエル・サラス・トレーナーから学んだ「下から組み立てる」ボクシングでペースをつかみ、6回に左の強弱をつけたフックでぐらつかせるとラッシュをかけて右のストレーでダウンを奪う。「大振りで正確さを欠いた」ために詰めきれずに、結局判定までいったが、2人がフルマークという圧勝。
　本人は「不甲斐ないデビュー戦に比べると少しは成長した」と納得していたが、武居との比較論で言えば、結果で上回ることができず、真剣な表情で、こう答えた。
「プロとして受け入れなければならない。相手も研究してきていた。まだまだ8オンスでの攻防の経験のなさが、こういう結果を生んでしまった」
ただ才能は示した。スピードとセンスに闘争心。かつてスパーリングをしたことのある井上が絶賛した抜群の距離感が光った。
　チャンピオンメーカーであるサラス・トレーナーは、「彼の何かを変えるのではなく持っている長所を引き出すトレーニングしかしていない。将来世界チャンピオンになれる逸材だ」と断言した。階級はフェザー級。「来年には何かしらのタイトル（日本や地域）を取りたい」と本人は考えている。

　またすでに世界ベルトを巻いた中谷潤人（24、M.T）は、もうニューウェーブとして扱うレベルのボクサーではないが、“ネクストモンスター“候補の1人だ。リーチを生かしたスタイリッシュなボクシングスタイル。米国ロスを練習の本拠地としていて初防衛戦を米国で行うなど海外での評価が先行して高い。2度防衛したWBO世界フライ級王座を無敗のまま返上。スーパーフライ級への転級を決めるとテストマッチにも圧勝。WBOは、さっそく中谷をランキング1位とし井岡との180日以内の指名試合を命じた。
　米専門サイトの「ボクシングシーン」によると、WBOの会長は、「30日以内に井岡と中谷は交渉を締結せよ。合意に達しない場合は入札になる」と両陣営に通達したという。
　井岡は、当初「王者の義務」として中谷を迎え撃つ考えだったが、ずっと対戦を熱望してきたWBC世界同級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ（メキシコ）が来場して対戦の可能性が出てきたため、交渉次第ではWBOタイトルを返上してエストラーダ戦に向かう可能性も出てきた。そうなれば中谷は上位の選手との王座決定戦への出場となり、前王者のアンドリュー・モロニ―（豪州）、あるいは3階級制覇王者の田中恒成(畑中)との対戦となるだろう。
　井岡戦を観戦した中谷は、こう決意を口にしていた。
「誰にでも勝てるように準備している。来年はスーパーフライ級のチャンピオンになるように頑張るだけ。どういう流れがきても、やるからには勝つ気持ち。勝負の年になる」
　将来のボクシング界を背負って立つ次世代エースは誰になるのだろうか。
（文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社）