神村学園を4強に導いた大会ナンバーワンFW福田師王はどれほどの逸材なのか…すでにボルシアMG入りが内定
ひとたびピッチを離れれば、福田は口調も穏やかな好青年の素顔を見せる。ただ、一度これだと決めたことを貫き通す芯の強さも持ち合わせている。そのひとつが今大会中を含めて、高校3年間を通じて実践してきた一日一回のゴミ拾いとなる。
神村学園中学から高校に進んだ福田は、周囲を“いじる”行為を有村監督から咎められ、その上で「人として変わりなさい」と諭された。徳を積む、という思いが少年の心を動かしたのだろうか。熟慮した末に始めたのがゴミを拾う習慣だった。
最後の選手権が始まってからは、特にゴミを見つけるようになったと福田は笑う。
「いまはマスクを拾うのはちょっと怖いですけど、昨日は飴が落ちていたので拾いました。まだまだ人間性が悪いので。よくしていかないと、サッカーも比例して伸びていきませんから」
盟友の大迫やチームの垣根を越えて絆を深めた荒井は、Jリーグで新たな戦いをスタートさせる。福田をめぐっても、もちろんJクラブが争奪戦を繰り広げた。そのなかで日本を飛び越え、ドイツでの挑戦を選んだ自分を、福田は「まだまだ」と位置づける。
「もっともっと一人で打開する力をつけたい。例えば山田さんが相手でも、ドリブルでもボールキープでも相手が何人きても一人でできるフィジカルの強さも身につけたい」
ナンバーワンストライカーとは、あくまでも高校年代で手にしたもの。青森山田戦を含めて何度もうかがわせた大器の片鱗をさらに伸ばせる環境がそろっていると判断し、一抹の不安を大きな期待で塗りつぶしながら選んだのがボルシアMGへの加入だった。
ボルシアMG側もU-23チームか、ひとつ下のU-19チームでまずはスタートさせる方針を固めている。ゴール前における多彩な動き出しと、右足、左足、頭とすべてでゴールを狙える得点能力を、さらに高いレベルへ導くための準備がすでに整っている。
渡独する前の大仕事も、もちろん忘れていない。初出場だった2006年度大会のベスト4を超える決勝進出。そして、2004年度大会の鹿児島実業以来、18大会ぶり3度目の鹿児島県勢の優勝。2004年に生まれた福田は残り2試合にいまはすべてを注ぐ。
「得点は決めていますけど、まだ2点なので。全然足りないです」
これまでに何度も非凡さを見せつけた福田の視線は、聖地・国立競技場に舞台を移す準決勝でのさらなる大暴れへ向けられている。決勝進出をかけて岡山学芸館(岡山)と対峙する一戦では、体調不良から回復した有村監督も満を持して指揮を執る予定だ。
(文責・藤江直人/スポーツライター)