なぜ亀田和毅は「井上尚弥に勝つ自信がある」と発言したのか…物議を呼んだ発言の根拠を説明
ただ現時点で井上陣営は和毅にまったく興味はない。さらなる高みを目指す井上にとって和毅は対象外なのだ。それも当然の話。昨年7月の試合は、KOでまとめたが、ここ数試合は精彩を欠き“フレーム論”を強調しても、今は説得力がない。WBSSの決勝で井上に完敗したノニト・ドネア(フィリピン)が、WBCのベルトを獲得して2年半後に再戦にこぎつけたように和毅もまずWBAのベルトを手にしてスーパーバンタム級でも4団体統一を狙う井上が、対戦せざるを得ないポジションを得るしかない。
それでもTMKジムの会長に就任した元協栄ジム会長の金平桂一郎氏は、「井上選手がどの方向にいくかわからないが、ゆくゆくは対戦候補として和毅の名前が出てくるのは普通の流れ」と井上戦の実現に希望を抱く。
この日、ジム移籍第一弾となる世界前哨戦が発表された。
2021年12月にWBAの挑戦者決定戦に勝利して、WBA&IBFの統一王者であるアフマダリエフへの挑戦権を得たが、IBFがタパレスとの指名試合を指令、先日、両陣営が対戦に合意した。アフマダリエフが、左拳を骨折していることから、その試合は早くても4月末になりそうで、和毅も昨年7月以来、試合間隔が空いているため「(前哨戦を)やらなくとも世界戦は決まっているが、前回の試合は7月。世界戦は100%以上でいかないと簡単じゃない。そのために1試合やっておきたかった」との位置付けで、この試合を決めた。
相手は、34戦30勝(20KO)4敗の同級13位の世界ランカーのメキシカン。最終的に和毅自身が選んだ。
「KO負けしたことがない打たれ強いファイターで前に出てくる。圧倒して、そこを仕留め切りたい。今までのボクシングでも大差判定勝ちはいけるが、今行っているトレーニングの技術を入れて、ここをしっかりと倒さないと、ムロジョン、タパレスに勝つのは難しい。しっかりと勝って次につなげたい。右の拳も治ってきた。右を打っていいタイミングで倒したい」
和毅のスピードとコンビネーションはワールドクラスだが、まだ一発で倒すパワーは不足している。その課題を克服するために、あえてタフな相手を選んだのだ。昨年4月から世界挑戦経験もある武本在樹トレーナーとコンビを組んでいるが、その練習の成果を試したいという。
アフマダリエフとタパレスの指名試合は王者が有利と言われているが、元WBO世界バンタム級王者で、大森将平、岩佐亮佑、勅使河原弘晶らと対戦して日本でも知られているタパレスもタフだ。和毅は、かつてタパレスをスパーリングパートナーとして3週間呼んだ経験があり、「彼もいいボクサー。ムロジョンの拳の怪我の状況もあるし試合を見てみないとわからない」と、両にらみで準備をする考え。思い描く井上尚弥戦の前に世界ベルト奪取という大きな壁を乗り越えなければならない。まずは2月の世界前哨戦で評価を一変させるような進化をアピールする必要があるだろう。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)