“塩試合ドロー”で総合格闘技引退からたった1日でボクシング引退?元五輪金メダリスト石井慧が表明した引退宣言が波紋…所属ジムは「意思は尊重するができれば続けて」と撤回を熱望
プロボクシングの「3150FIGHTvol.4」が6日、エディオンアリーナ大阪で行われ、第2試合で、柔道の元北京五輪100キロ超級金メダリストで総合格闘家の「サトシ・イシイ」こと石井慧(36、ミツキ)がハン・チャンス(31、韓国)とヘビー級4回戦で対戦したが、終始、押し込むだけの”塩試合”で、2者が38-38とつける1-0判定でドロー。試合後「これを最後にします」とボクシング引退を表明した。事実上、総合格闘技を引退し、JBC(日本ボクシングコミッション)のボクシングライセンスを取得して今回の試合に臨んだが、たった1試合で、今度はボクシングの引退を表明。ファンや周囲の関係者に波紋を広げる問題発言となった。
「ボクシングはこれで最後にします」
まるで総合の試合だった。石井は、3分×4ラウンドのほとんどの時間を組み付いていた。昨年8月のデビュー戦もフィジカルを生かしてプレスをかけるだけの不完全燃焼の内容となり、「今回はちょっと違う戦いをしたい」と、準備を積んできたが、その一端を見せたのは1ラウンドだけだった。
オープニングブローの左フックは、しっかりとクリーンヒットした。足を使いプレスをかけずに引く展開を作り、ボクシングをやろうとしていた。だが、セコンドに「効いた」という一撃をもらってから、石井がやろうとしていた「前回と違う戦い」は、トーンダウン。
ノーガードで、なめられたようにパンチを振りまわしてくるハン・チャンスの勢いに苦しみ、「プレス」、「プレッシャー」のセコンドの指示にも従えない。ノーモーションの左を打っては、組み付き、ロープ、コーナーに押し込むことをし始めたが、そこから先の展開を作ることができなかった。
試合後、ハン・チャンスは「相手の体が強くて押し付けられ、やりたいボクシングをやらせてもらえなかった」と、悔しがった。
2人のジャッジは2、3ラウンドを石井につけていたが、山場がないまま、試合終了のゴングを聞くと、石井は無表情のままコーナーに帰った。
スタッフに「ボクシングは難しいですわ」とつぶやいたという。
判定結果は、ジャッジの1人が39―37で石井を支持したが、残り2人は38-38で、1-0判定のドローとなった。
試合後の会見で椅子に座った石井はうなだれていた。
「煮え切らない試合になってしまった。やっぱりボクシングは難しい」
そして衝撃発言が飛び出す。
「相手?強かったですね。もうこれで最後にします。ボクシング。ありがとうございました」
まさかの引退発言をして質疑を受け付けずに席を立った。
自らの才能のなさに嫌気がさしたのか。それとも練習の成果が出ないことに限界を感じたのか。確かに2試合連続の”塩試合”に成長は見られなかったが、石井は「今さら世界王者は無理だが、ボクシングは五輪競技にもあるスポーツ。魅力がある」とボクシングという競技の魅力を熱く語っていた。
昨年のボクシングデビュー戦はクロアチアのライセンスを使った外国籍選手としてリングに上がったが、「本格的にボクシングをやりたい」との意向を示して、今回は大阪府堺市になるミツキボクシングジムに所属、JBCのライセンスを取得しての出場だった。JBCルールでは、総合格闘技との兼業が禁止されているため、事実上、総合格闘家を引退して、ボクシングライセンスを取得したのだ。
JBC内部では、女子、ヘビー級に関しては、人材を確保するために、ボクシング界と格闘技界を行き来できるようなルールの緩和が議論されており、石井の今回の正式な手続きを経てのライセンス取得が、その突破口になるかもしれないとも考えられていた。