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岡山学芸館の2年生”守護神”の平塚仁がビッグセーブ。チームを初の決勝へ導く(写真:松尾/アフロスポーツ)
岡山学芸館の2年生”守護神”の平塚仁がビッグセーブ。チームを初の決勝へ導く(写真:松尾/アフロスポーツ)

なぜ岡山学芸館は”最強FW”福田師王を擁する神村学園を破り初の決勝進出を決めたのか…”個の能力”に組織力で対抗

 

 それでも3分後にFW今井拓人(3年)のゴールで岡山学芸館が追いつく。しかし、今大会後にセレッソ大阪入りする大迫の正確無比なキックは、24分に獲得した右CKからDF中江小次郎(3年)の勝ち越しのヘディングゴールもアシストした。
 再び窮地に陥った岡山学芸館を救ったのは、身長166cm体重67kgの小兵サイドアタッカー、岡本温叶(はると、3年)が決めたスーパーゴールだった。
 4分後の28分に発動させたカウンター。左サイドの今井からゴール中央へ走り込んだ岡本へパスが通るも、左足でのトラップが大きく浮いた。岡本自身も「ちょっとミスをしてしまった」と認め、慌ててボールを収める間に2人のマークが背後についた。
 ここで岡本は奇想天外なプレーを選択する。
 ペナルティーエリア内から外へ、時計回りの弧を描くように意図的にボールを運んだ。自分たちのゴールから遠ざかっていく岡本の姿に気を緩めたのか。神村学園の選手たちの足が止まった刹那に、上半身を強引に捻りながら左足を思い切り振り抜いた。
 低く強烈な弾道がカーブの軌道を描きながら鋭く急降下していく。相手ゴールの左隅を射抜く前に両手を広げ、同点を確信した岡本は実は両利き。正確にいえば、小学生の頃から積み重ねてきた努力の賜物で左足も遜色なく使えるようになった。
「自分は足が速くなくて、それでもこの先、サッカーで生きていくのならば両足で精度の高いボールを蹴れるのを武器にしなければいけないと思ってきた。シュートもクロスもひたすら練習して、中学2年生の頃には左足でも普通に蹴れていました。高校に入ってからも突き詰めて、いまでは左足の方が自信あるんじゃないか、というぐらいになっています」
 卒業後は中央大に進学して、4年後のプロを目指してサッカーを続ける。言葉は適切でないかもしれないが、自らを雑草的な存在だと認め、他の選手にはない武器を必死に追い求めてきた軌跡が選手権の準決勝、国立の舞台で鮮やかに花開いた。
 その後はともに譲らず、岡山学芸館の先蹴りで始まったPK戦。重圧のかかる1番手を託された岡本は、強烈な一撃をど真ん中に突き刺して流れを呼び込んだ。
 実はPKを蹴る直前に初めて経験するやり取りがあった。
「(右と左の)どっちに蹴るの」
 心理戦を仕掛けたのか。神村学園のGK広川がささやいてきた。
「真ん中に蹴るよ」
 まったく動じなかった岡本の言葉に、広川の心中で逆に迷いが生じたのか。言葉通りに真ん中へ蹴った岡本に対して、広川は右へ跳んでしまった。
 後蹴りの神村学園は1番手の大迫が決めるも、2番手のFW西丸道人(みんと、2年)が右ポストに当ててしまう。岡山学芸館が3人続けて、完璧なコースへ強烈な一撃を決めて迎えた3人目。福田がペナルティースポットへ近づいていった。

 

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